龍那

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3/25/2023, 10:35:55 AM

[好きじゃないのに]

 好きじゃない。
 ずっとそう言ってるし、その気持ちは一生変わらないと信じてる。
 なのに友達はおすすめだと言う。

 赤い頬が素敵で。
 太陽がよく似合っていて。
 みんなにも好かれているし。
 当たり前のような顔して近くに居る。

 きっと食わず嫌いなだけだよ。とよく言われる。
 一度良さが分かれば、あとはあっという間だよって。

「いやだから、トマト好きじゃないんだって!」
「オムライスにケチャップかけながら言うセリフじゃない」
「それはそれ、これはこれだよ!!」

3/24/2023, 11:56:03 AM

[ところにより雨]

 ところにより、とは。
 地域の一部。部分的にそんな場所もある。みたいな感じだ。

「--よし」
 残ったシミをペットボトルの水で洗い流して、頷いた。
 傍には気を失った男性。ぐったりしてて顔色も悪いが、命に別状はないだろう。
 服に血が付いてるが、盛大に転んだからだ。そう言うことにしてある。
 腹部の傷も、もう少ししたら塞がるだろう。

 気付いたのは偶然だったけど、犯人には感謝しよう。
 明日のニュースにならないのは、俺からのささやかなお礼だ。
 いいことをした。

「それじゃ、ご馳走様。もし思い出したら、犯人は自分で探してね」

 そう言い残して、通り魔事件の現場を後にした。
 あの路地裏が濡れてるのは雨が降ったんだ。天気予報でも「ところにより雨」って言ってたし。

 でも、実際降ったのが血の雨だったと知ってるのは俺だけだ。
 それでいい。

3/23/2023, 11:46:25 AM

[特別な存在]

兄さんは特別な存在だった。

幼い頃から魔導書を読み。剣術を習得し。周りの大人を驚かせた。
飛び級で学園に入り、最年少で卒業した。
魔法が好きだった兄はそのまま研究職に進み、日常的な道具から研究器具まで、様々分野に魔法を浸透させた。

そんな兄さんのノートを見たことがある。

色んなことが書いてあった。
日記、魔術の覚え書き、母さんのレシピ。地名。
高層ビル。赤い鉄塔。高架を走る車と、新幹線の絵。
ぐしゃぐしゃに塗りつぶされた文字は読めなかったけど。
隅には「この世界を目指す」と見覚えのある文字で書いてあった。

「そっか。そうなんだね」
僕はそのノートをそっと元の場所にしまって。
今回も、彼の助けになれるよう頑張ろうと決めた。

だって彼は、昔から「私」の特性な存在なのだから。

3/22/2023, 12:30:20 PM

[バカみたい]

 テストプレイを兼ねて作った僕のアバター。
 彼は、ずっとこの世界と共にあった。

 なのに、彼はいつしかみんなのテストアバターになってしまった。
 気付けばゲームの中で他に居ない「キャラクター」になってしまった。
 
 未実装故に唯一の職業。
 自動操縦で24時間、必ずどこかに存在するbot。
 常にレベルキャップを維持する廃人プレイヤー。

 いろんな噂が纏わりついた。
 好意も悪意も羨望も妬みも飛んできた。

 僕はそれでも君を普通にしていたかったんだけど。
 バカみたいだな、と思ってしまった。
 最初から普通にはなれなかったんだと気付いてしまった。

 ならばと僕は、君に詰め込めるだけの機能を詰め込んだ。
 簡単ながら学習AIも付けて、フィールドに放った。

 そして僕は、ひとつの企画書を提出した。
「新規職業の実装に伴う、カメリア討伐クエスト」

 さようならカメリア。
 君が倒されたその時が、君の本当の旅の始まりだ。

3/21/2023, 12:53:08 PM

[二人ぼっち]

 ひとりぼっちの 教室/丘の上 で
 夕日を見てる 僕/私

 夥しい 机/十字架 の山を背にして
 黒板/ウィンドウ を確認する。

「君は今、何をしてますか?」
「夕日を見てるよ」

 今日も 送る/届いた 中身が揃いのメッセージ。
 座標も同じはずなのに、決して見えない君はきっと。
 ふたり揃って、ひとりぼっちなのだろう。

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