龍那

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3/20/2023, 11:03:41 AM

[夢が醒める前に]

 夢の中で、アイツはいつも俺を笑っている。
 見知らぬ教室で。
 夜の校庭で。
 夕暮れの道で。
 肌寒いスマホの写真の奥で。
 管楽器の音が響く薄暗い階段で。
 星が綺麗な屋上で。
 
「ーーああ」
 目が覚めて後悔した。
 今日こそは。今日こそはやっておくべきだった。
 
 夢が醒める前にアイツを消しておかないと。
    は、⬛︎の番なのだか

3/19/2023, 12:29:29 PM

[胸が高鳴る]


 胸が高鳴るような感情とは。

 たった一度、保健室に運んでやった一年生が忘れられないことで。
 名前もクラスも知らないのに、校内で見かけたらつい目で追いそうになることで。
 
 そんな気は全くないのに。
「お前さ、好きな子できた?」
「……は?」
 これだけのやり取りで、友人に何かがバレるようなやつらしい。

 実際高鳴ったりはしていないと思っているんだが。
 そう言われると、次見かけてしまったら何を思うのか。
 分からなさすぎて溜息をついたら、友人は何が楽しいのかニヤニヤしていた。

 イラっとしたので飲み物を奢らせることにした。

3/18/2023, 11:55:46 AM

[不条理]

 神が死んでから、世界は偶然で動いていると言う。
 ならばきっと、私が交通事故で死んだのも偶然なのだろう。

 それなら仕方ないかな、なんて思っていたのに。
 目の前に現れた、神と名乗る誰かはこう言った。

「貴女が死んだのは、世界を救うためです。これも運命なのです」
 つまり私は、世界を救いたい神に殺されたってことで?

3/17/2023, 11:14:09 AM

[泣かないよ]

「泣かないの?」
「泣かないよ?」
「本当に?」
「ホントだよ」
「……」
「疑ってるね?」

 いやだって。と、彼は呆れたような目で僕を見た。

「君、めちゃめちゃ涙脆いじゃん」
「それ、オイルだし」

 彼は、その答えになぜか勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「涙ってのはな。目から出る体液っていう定義なんだぞ」
「なるほど。ならば僕の体液はオイルか。でも、泣かないよ」
「なんで」

 今度は僕が勝ち誇った笑みを浮かべる番だった。

「君が死んでも泣くな、って。初代の君にプログラムされてるからさ」

3/16/2023, 10:17:12 AM

⬛︎ 怖がり ⬛︎

彼は怖がりだ。
光を怖がり、音を怖がり。
空を。月を。太陽を。
広いところも。狭いところも。
彼を好む人も。嫌う人も。
全てを怖がり、隅に隠れている。

私はそんな彼の所に居るのが好きなんだけど、何を話しても、尋ねても。彼は推し黙っていて、答えてくれない。
部屋の隅でも、学校の階段の下でも。ベッドの中でも。

いつでも、どこでも。
全てを怖がる彼は、自分すらも怖がるように隠れている。
だから私は言うのだ。

「君は暗がりなのに、何がそんなに怖いんだい?」

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