──どこへだって行ける。
(君と一緒に)
保全します。
明日からは書けるはず……です。
(冬晴れ)
保全致します
(幸せとは)
後日書きます
──それは太陽よりも。
二人で朝日が昇るのを見ようと、近所の小高い丘まで歩いてきた。ベンチに座って少し上がった息を整えつつ、日の出を待つ。
辺りはもうほの明るくなってきている。
「……あ」
遠くの山の頂が金色にふち取られて、まろい橙色が頭を出す。その眩しさに思わず顔を逸らした。
隣に座る彼女は、ミルクティー色の髪を赤く染めながらじっと光を見つめていた。
「きれいですね」
「うん」
僕はまだ太陽の方へ顔を向けられない。代わりに、好奇心を湛える竜胆色の瞳を見つめる。紫の中に橙色が映りこんで、徐々に光を強めていく。
「見に来てよかったです」
「そうだな」
視界の端で太陽がゆっくりと昇っていって、山の頂上から完全に姿を現した。ふ、と紫色が伏せられて、ようやく彼女がこちらを見る。
「来年も見に来たいです」
「ああ、僕もだ」
僕の色素が薄い瞳は、強い光を直接見ることに向かないらしい。君と一緒に日の出を楽しむことはどうにも難しいようだ。
「ふふ、眩しくて目がちかちかします」
「少し、目を休めたほうがいいんじゃないか」
「ええ」
目が変だと言う割には、ずいぶんと楽しそうだ。目を閉じてくすくすと笑っている。
朝日を直視できない代わりに、光を浴びる君を見つめることを許してくれないか。どんなに眩しい太陽よりも、君の竜胆色の瞳のほうがずっと神々しくてうつくしいのだから。
(日の出)
──叶えたいなら努力せよ。
「君の隣にいることができれば、それだけでいい」
「それは……抱負、というよりは」
「願い、に近いかもしれないな」
「……でも、口に出したのなら」
「うん」
「ちゃんと叶えてくださいね」
「ああ、約束しよう」
「ご飯も毎日食べてください」
「食べている」
「三食ぜんぶを携帯食で済ませるのは、しっかりした食事と言えないと思いますよ」
「君が一緒に食べてくれるか?」
「できる限りは」
「……そうか」
「あと、昼間、眠くならない程度には夜に寝てください」
「昼寝をすれば良いじゃないか」
「あなたの眠りが浅いのはわかってます。できるだけで良いんです」
「夜に眠ると、そのまま闇に呑み込まれてしまいそうになるから嫌なんだ」
「子守唄でもなんでも歌って差し上げます」
「……君の声が聞こえるなら眠れるかもしれないな」
「それから、自分を危険に晒すようなことをしないでくださいね」
「いちばん効率的なんだ」
「それで大怪我をしたら、ましてや命を落としたら効率も何もないでしょう?」
「だが、」
「他に方法を考えますから。村の人たちにも訊いてみましょう」
「ああ……そうか。もうひとりだけで考えなくて良いのか」
「ええ」
「そうだったな」
「約束ですよ」
「うん、約束だ」
(今年の抱負)