──それは太陽よりも。
二人で朝日が昇るのを見ようと、近所の小高い丘まで歩いてきた。ベンチに座って少し上がった息を整えつつ、日の出を待つ。
辺りはもうほの明るくなってきている。
「……あ」
遠くの山の頂が金色にふち取られて、まろい橙色が頭を出す。その眩しさに思わず顔を逸らした。
隣に座る彼女は、ミルクティー色の髪を赤く染めながらじっと光を見つめていた。
「きれいですね」
「うん」
僕はまだ太陽の方へ顔を向けられない。代わりに、好奇心を湛える竜胆色の瞳を見つめる。紫の中に橙色が映りこんで、徐々に光を強めていく。
「見に来てよかったです」
「そうだな」
視界の端で太陽がゆっくりと昇っていって、山の頂上から完全に姿を現した。ふ、と紫色が伏せられて、ようやく彼女がこちらを見る。
「来年も見に来たいです」
「ああ、僕もだ」
僕の色素が薄い瞳は、強い光を直接見ることに向かないらしい。君と一緒に日の出を楽しむことはどうにも難しいようだ。
「ふふ、眩しくて目がちかちかします」
「少し、目を休めたほうがいいんじゃないか」
「ええ」
目が変だと言う割には、ずいぶんと楽しそうだ。目を閉じてくすくすと笑っている。
朝日を直視できない代わりに、光を浴びる君を見つめることを許してくれないか。どんなに眩しい太陽よりも、君の竜胆色の瞳のほうがずっと神々しくてうつくしいのだから。
(日の出)
1/4/2025, 8:11:04 AM