──好きな香り?
キャンドル、と言われて真っ先に思い浮かぶのは魔獣避けの蝋燭だ。魔獣対策課に勤める人間はほとんどがそうだろう。職業病と言えるかもしれない。
魔獣が嫌う薬草や香草を調合し、固めただけの実用性重視の無骨なものだ。市販のと違ってなんの飾り気も無いし、なんなら魔獣に効果があれば良いから人間の嗅覚じゃ全然匂いを感じない。そのせいで、局員からは「効いているのか効いていないのか分かりづらい」と不評だった。
しかしそこは天下の魔法省、局員の不満は放っておかずにさっさと対応するのが吉と見て、研究所に依頼を出した。内容は「魔獣忌避蝋燭の匂いの改善並びに効果の増加」。さりげなく効果もあげようとしてるところがウチだよなあ。
(キャンドル)
後日加筆します。
──これからも一緒に思い出を作ってくれますか。
(たくさんの思い出)
10/5「星座」と少し繋がっています。
──あたたかいから側に居て。
「あー、ねっむ……おぉ?」
目覚めると、何やら隣に体温がある。髪をかきあげながら見れば同居人が丸まっていて、そんでもって小刻みに震えていた。違うベッドで寝ていたはずだと目を擦ってもまだ居る。よし、夢じゃないな。
とりあえず、ベッドの隅で纏まってしまっていた毛布を引っ張って掛けてやる。
「どうしたー?」
「……さむい」
「そりゃそんなうっすいパジャマ着てたらなあ」
濃紺の綿のパジャマは白い肌によく似合うけど、今日みたいな朝には辛いだろう。少し乱れた灰色の頭を撫でてやれば、もぞりと毛布が動いて顔が出てきた。
「なんでおまえはへいきなんだ」
「こないだ衣替えしたろ、そんときに変えた。お前は?」
「これがふゆようだが」
「マジで?」
ぽやぽやした声で、「まじだ」と使い慣れていないだろう言葉を返して来る。瞼が落ちそうだ。さては寝ぼけてんな。
「なら今度新しいパジャマ買いに行こうぜ。もっこもこのやつ」
「もこもこ」
「毛布みたいにふわふわしてんの」
「ふわふわ」
手元の毛布を握って首を傾げている。見たことないのか、ふわふわしたパジャマ。俺は小さい頃よく着てたんだけどなあ。
「寒いんだろ?」
「もうふをきるのは、あつくないか」
「俺持ってる」
「そうか」
そもそも毛布そのものを着るわけじゃないし。早くあったかいのを着させないと体調を崩しそうだ。
「いっそ今日買いに行くか? 休みだろ」
うとうとと船を漕ぎ始めた頭をわしゃわしゃとかき混ぜる。むずがるように首が振られて、灰色が毛布に逃げ込んでしまった。
「いい……おまえがいるから、さむくない」
寝ぼけながらとんでもないこと言いやがる。
「いっ……いわけないだろ、風邪引くぞ」
「ひかない……」
「あーほら寝るんなら大人しく寝ろ、俺は腹減ったら起きる」
「いやだ」
「ぐえ」
ベットから降りようとすると腹に手が回って潰れた声が出た。どこにそんな力あんだよ、眠りかけてるのに。体勢がきつくて毛布の中に逆戻りだ。
「こら離せ、苦しい」
「む……」
「おーい」
軽く腕を叩けば、少し締め付けが緩んで息がしやすくなる。うん、でも離れてねえな?
「はーなーせ」
「いやだ……さむい……」
「毛布あんだろ」
「おまえがいい」
「は?」
「あたたかい……」
そんなこと言われたら動けないだろうが!
「おーい」
「んう……」
だめだこりゃ、完璧に寝たな。
あーあ、仕方ねえ、二度寝するか。
でも、起きたら絶対にもこもこのパジャマ買って着せてやるから覚悟しとけよ。
(冬になったら)
夜なのに朝の話ですみません……。
──置いていくくらいなら。
「一緒に連れていく!!」
「はーい行ってらっしゃーい」
「嫌だ! 君を置いていくのは嫌だ!」
「わがまま言わないの」
「だって君、一人になるとすぐ泣くじゃないか!」
「泣いてないし」
「嫌だ!」
「はいはい、ほら行きなさい」
「サボる!」
「責任者が遠征サボってどうするの。これ荷物ね。お土産よろしく」
「嫌だ!!」
「ばいばーい」
「あ」
抵抗虚しく家の外に放り出されてしまった。
(はなればなれ)
後日加筆します。少し忙しくなるので更新が遅くなります。
──子猫だと、思っていたのに。
(子猫)
後ほど書きます!