10/5「星座」と少し繋がっています。
──あたたかいから側に居て。
「あー、ねっむ……おぉ?」
目覚めると、何やら隣に体温がある。髪をかきあげながら見れば同居人が丸まっていて、そんでもって小刻みに震えていた。違うベッドで寝ていたはずだと目を擦ってもまだ居る。よし、夢じゃないな。
とりあえず、ベッドの隅で纏まってしまっていた毛布を引っ張って掛けてやる。
「どうしたー?」
「……さむい」
「そりゃそんなうっすいパジャマ着てたらなあ」
濃紺の綿のパジャマは白い肌によく似合うけど、今日みたいな朝には辛いだろう。少し乱れた灰色の頭を撫でてやれば、もぞりと毛布が動いて顔が出てきた。
「なんでおまえはへいきなんだ」
「こないだ衣替えしたろ、そんときに変えた。お前は?」
「これがふゆようだが」
「マジで?」
ぽやぽやした声で、「まじだ」と使い慣れていないだろう言葉を返して来る。瞼が落ちそうだ。さては寝ぼけてんな。
「なら今度新しいパジャマ買いに行こうぜ。もっこもこのやつ」
「もこもこ」
「毛布みたいにふわふわしてんの」
「ふわふわ」
手元の毛布を握って首を傾げている。見たことないのか、ふわふわしたパジャマ。俺は小さい頃よく着てたんだけどなあ。
「寒いんだろ?」
「もうふをきるのは、あつくないか」
「俺持ってる」
「そうか」
そもそも毛布そのものを着るわけじゃないし。早くあったかいのを着させないと体調を崩しそうだ。
「いっそ今日買いに行くか? 休みだろ」
うとうとと船を漕ぎ始めた頭をわしゃわしゃとかき混ぜる。むずがるように首が振られて、灰色が毛布に逃げ込んでしまった。
「いい……おまえがいるから、さむくない」
寝ぼけながらとんでもないこと言いやがる。
「いっ……いわけないだろ、風邪引くぞ」
「ひかない……」
「あーほら寝るんなら大人しく寝ろ、俺は腹減ったら起きる」
「いやだ」
「ぐえ」
ベットから降りようとすると腹に手が回って潰れた声が出た。どこにそんな力あんだよ、眠りかけてるのに。体勢がきつくて毛布の中に逆戻りだ。
「こら離せ、苦しい」
「む……」
「おーい」
軽く腕を叩けば、少し締め付けが緩んで息がしやすくなる。うん、でも離れてねえな?
「はーなーせ」
「いやだ……さむい……」
「毛布あんだろ」
「おまえがいい」
「は?」
「あたたかい……」
そんなこと言われたら動けないだろうが!
「おーい」
「んう……」
だめだこりゃ、完璧に寝たな。
あーあ、仕方ねえ、二度寝するか。
でも、起きたら絶対にもこもこのパジャマ買って着せてやるから覚悟しとけよ。
(冬になったら)
夜なのに朝の話ですみません……。
11/17/2024, 12:17:59 PM