うみ

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11/17/2024, 12:17:59 PM

10/5「星座」と少し繋がっています。


 ──あたたかいから側に居て。


「あー、ねっむ……おぉ?」

 目覚めると、何やら隣に体温がある。髪をかきあげながら見れば同居人が丸まっていて、そんでもって小刻みに震えていた。違うベッドで寝ていたはずだと目を擦ってもまだ居る。よし、夢じゃないな。
 とりあえず、ベッドの隅で纏まってしまっていた毛布を引っ張って掛けてやる。

「どうしたー?」
「……さむい」
「そりゃそんなうっすいパジャマ着てたらなあ」

 濃紺の綿のパジャマは白い肌によく似合うけど、今日みたいな朝には辛いだろう。少し乱れた灰色の頭を撫でてやれば、もぞりと毛布が動いて顔が出てきた。

「なんでおまえはへいきなんだ」
「こないだ衣替えしたろ、そんときに変えた。お前は?」
「これがふゆようだが」
「マジで?」

 ぽやぽやした声で、「まじだ」と使い慣れていないだろう言葉を返して来る。瞼が落ちそうだ。さては寝ぼけてんな。

「なら今度新しいパジャマ買いに行こうぜ。もっこもこのやつ」
「もこもこ」
「毛布みたいにふわふわしてんの」
「ふわふわ」

 手元の毛布を握って首を傾げている。見たことないのか、ふわふわしたパジャマ。俺は小さい頃よく着てたんだけどなあ。

「寒いんだろ?」
「もうふをきるのは、あつくないか」
「俺持ってる」
「そうか」

 そもそも毛布そのものを着るわけじゃないし。早くあったかいのを着させないと体調を崩しそうだ。

「いっそ今日買いに行くか? 休みだろ」

 うとうとと船を漕ぎ始めた頭をわしゃわしゃとかき混ぜる。むずがるように首が振られて、灰色が毛布に逃げ込んでしまった。

「いい……おまえがいるから、さむくない」

 寝ぼけながらとんでもないこと言いやがる。

「いっ……いわけないだろ、風邪引くぞ」
「ひかない……」
「あーほら寝るんなら大人しく寝ろ、俺は腹減ったら起きる」
「いやだ」
「ぐえ」

 ベットから降りようとすると腹に手が回って潰れた声が出た。どこにそんな力あんだよ、眠りかけてるのに。体勢がきつくて毛布の中に逆戻りだ。

「こら離せ、苦しい」
「む……」
「おーい」

 軽く腕を叩けば、少し締め付けが緩んで息がしやすくなる。うん、でも離れてねえな?

「はーなーせ」
「いやだ……さむい……」
「毛布あんだろ」
「おまえがいい」
「は?」
「あたたかい……」

 そんなこと言われたら動けないだろうが!

「おーい」
「んう……」

 だめだこりゃ、完璧に寝たな。
 あーあ、仕方ねえ、二度寝するか。

 でも、起きたら絶対にもこもこのパジャマ買って着せてやるから覚悟しとけよ。


(冬になったら)

 夜なのに朝の話ですみません……。

11/16/2024, 12:56:39 PM

 ──置いていくくらいなら。


「一緒に連れていく!!」
「はーい行ってらっしゃーい」
「嫌だ! 君を置いていくのは嫌だ!」
「わがまま言わないの」
「だって君、一人になるとすぐ泣くじゃないか!」
「泣いてないし」
「嫌だ!」
「はいはい、ほら行きなさい」
「サボる!」
「責任者が遠征サボってどうするの。これ荷物ね。お土産よろしく」
「嫌だ!!」
「ばいばーい」
「あ」

 抵抗虚しく家の外に放り出されてしまった。


(はなればなれ)
 後日加筆します。少し忙しくなるので更新が遅くなります。

11/15/2024, 11:52:29 AM

 ──子猫だと、思っていたのに。



(子猫)

 後ほど書きます!

11/14/2024, 12:36:54 PM

*11/12「スリル」10/14「高く高く」加筆しました。


 ──今日も君の風は優しいね。

 同居人の操る風は、季節によってなんだか雰囲気が違う。
 冬は冷たい雪の気配を、春は花の匂いを、夏は涼しさを運んでくる。

 そして今の季節。秋の彼の風は、寂しさを纏っている。

(秋風)

後日加筆します。

11/13/2024, 1:00:05 PM

 ──また明日、じゃないけれど。


 いつもの図書館、いつもの放課後、いつもと同じ座席。卒業間近と言うことで任意提出の課題をこなしながら、自分たちだけがいつもと違う。

「もうすぐ、また明日って言えなくなるんだねえ」
「そうだな」

 目の前の席で黙々と手を動かす友人から返って来るのは愛想のない返事。とはいえ、怒っているわけでも話に興味がないわけでもないのは知っている。

「……ちょっと寂しいかも」
「珍しいな」

 ふと友人が手を止めた。水色の眼と視線が交わる。

「そう?」
「ああ。普段のお前は負の感情を口に出そうとしないだろう」
「そりゃ、本当になったら困るから」
「前に言っていた東洋の思想か」
「ん、コトダマ、ってやつ」

 母の部屋の本棚にあった、珍しい東洋の思想書。あれを読んでから、どうにもネガティブな言葉を吐くのが怖くなった……というのは建前みたいなものだけれど。単に本音を言うのが苦手なんじゃないか、と他の友人に言われたことがある。

「生涯の別れというわけでもあるまい」
「寂しいものは寂しい。寮生活って特殊だよね」
「大勢の他人が共同生活を送る場だからな」

 寮部屋の片付けも少しずつ進んでいて、自室は生活感がなくなってきた。就職先である魔法省の職員寮には、すでにいくつかの荷物が届いているはずだ。

「楽しかったね」
「トラブルの方が多かったように思うが」
「過ぎちゃえば良い思い出だよ」

 波乱万丈だった学園生活の記録、つまりアルバムの作成もとうに済んだらしい。あとは本当に卒業式を迎えるだけだ。

「あーさみしー」
「しつこいぞ」
「だって、就職したら簡単には会えなくなるでしょ」

 呆れたような視線が投げられて、小さく頬を膨らませる。今度はため息を吐かれた。

「寂しくなる前に連絡を寄越せ。いつでも会ってやる」
「やだかっこいい」
「煩い」
「はあい」

 頬を萎ませて、課題に目を落とす姿をじっと見つめる。

「なんだ」
「ううん。卒業後に会うのが楽しみだなあって」
「気の早いことだ」
「あはは、君と友達で良かったよ」
「今更だ」
「たしかに!」

 これからもよろしくね、親友。
 

(また会いましょう)

 仲良しな二人です。

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