来世でも僕と一緒に殺し合おうね
「何の用事だった?もう帰るの?」
「なんか。パパ、死んだって。え、これってさ、何だと思う?本当なのかな?え、ママの冗談だよね?」
どんどんと呼吸ができなくなる。足に力が入らず座り込む。どんな意味が込められたかわからない涙が溢れる。
大っ嫌いだった父親の死は、
幼馴染の家の廊下で出た電話越しに
母親から聞いた。
「Behind the clouds is the sun still shining.」
雲の後ろでは太陽がまだ輝いている。
崩れて壊れて狂っていくわたしを
冷静に抱きしめて寄り添いながら、英詩を添える。
何?あんた本当に最高な男だよ。
大切で大嫌いな人の死に捧げる涙を、あなたの腕の中で流せるなんて、わたし、幸せ者だよね。
虹の架け橋。
オーラの色が近しいふたりが渡ればふたりの仲は良好になり幸せになれる。
私は紫。あなたは赤。
虹のオーラの中で1番遠いオーラどうし。
決して隣り合うことはない。
笑っちゃう。
あなたを1番愛しているのに。
規則の厳しい寮で生活するあなたと、
由緒正しい家で生活するわたし。
お互い門限なんてとっくに過ぎた23:00。力尽きそうな街灯のある小さな公園のベンチで肩を並べる。
なんの肩書にも縛られない何者でもないふたりきりのわたしたちは、子どものように純粋無垢で、大人のように成熟している。ふたりきりの時だけではどんな矛盾もどんな我儘でも調和する。
「会えないさびしさを紛らわしてくれる人よりも、会える喜びを満たしてくれる人のほうが好きです。」
「既読がつかないメッセージよりも、返信がない既読のメッセージのほうが嫌です。」
「監視盗聴のぬいぐるみよりも、GPSのネックレスのほうがいいです。」
会える日への意識誘導、些細なことでも頻繁に送られてくるメッセージ、突然のプレゼント。
あなたの独占欲は日に日に増していく。
なのに、目の前にいるわたしと目が合わない。でも、ひたすらわたしの全てを自分のものにしようとはする。
何を求めているのか。聞けたらきっと壊れてしまう。
多分、何者でもないわたしを求めているから。
わたしがそうだから。
「見て〜、ネイル。秋色にした」
お兄ちゃんの友達で、私の好きな人は
女の子みたいな男の子。
きっと私のことを恋愛対象としては見てくれていない。
ジェンダーって何?
世間が、世界が、受け入れようとしている。
優しくなろうとしている。
何かが変化している。
受け入れるも優しくなるも何もないでしょ。
彼は彼よ。
あなた達の中途半端な現状が私を苦しめる。
男か女しかない世界なら、変化を嫌う世間なら
私は楽でいられたかもしれない。
あなたを苦しめていることに背を向けながら。
今日も笑顔で隣に並ぶ。
好きな人の妹としての笑顔で。