柳絮

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6/7/2023, 10:55:23 AM

世界の終わりに君と


「ワルツを踊りたい」
「レオン様……」
「いいだろう、セレナ? 崩壊する世界の中心で、君のことだけを見つめていたい」
「素敵なお誘いですわ」
「ならば、」
「ですが」
公爵令嬢は凛とした姿勢を崩さず魔王に微笑みかけた。
「わたくし、メリバはお断りですの」
「めりば?」
「貴方様と踊るのは、こんな陰気な廃墟ではなく陽の光の下で皆に祝福されながら、ですわ」
「何を今更、」
「レオン様。わたくしにできないことがあると思って?」

6/7/2023, 10:43:37 AM

最悪


「ちょっと聞いてよ! 朝から目覚ましかけ忘れて寝坊するわ、携帯は充電できてないわ、登校中は犬に吠えられるし、自転車にも轢かれそうになるし、昇降口では転びそうになるし、もー最ッ悪!!」
「ついてないねぇ」
「今日絶対占い最下位だったね! 見る暇なかったけど! ……あ」
「どした?」
「教科書入れ替えるの忘れた」
「それはあんたが悪い」
「ううう……てか今日人少なくない?」
「あ、うん。臨時休校だから」
「Why?」

6/5/2023, 3:39:31 PM

誰にも言えない秘密


それは私が魔法少女だということ。
きっかけは2週間前。娘の部屋が騒がしくて覗いたら、丁度ステッキが飛んできて頭に当たり魔法少女になってしまった。娘とお助けキャラのひよこは絶叫した。ステッキは使用者変更ができないらしく、ひよこは蒼い鳥と化した。
変身すると味方にも認識阻害の魔法が働くらしく、娘と同年代の魔法少女仲間たちからは特に突っ込みはない。変身前には絶対に姿を見せない謎多きクールキャラで通している。

6/4/2023, 2:20:24 PM

狭い部屋


右手を伸ばすと音楽プレイヤー。
左手を伸ばすと古い雑誌。
右足の先にゴミ箱。
左足の下に毛布。
卓袱台にはペットボトルとコンビニ弁当の容器。
本棚には読み飽きた漫画と小説。
全て手の届くところにある。
ガチャリと鍵の回る音がした。ハッとして身を起こす。ドアノブが動く。外の光が影に遮られる。
「ただいま。いい子にしてた?」
優しい声に、柔らかな絶望が湧き上がる。
手を伸ばすと彼は私を抱きしめて、首輪とリードを確かめた。

6/3/2023, 12:30:00 PM

失恋


「ゔぉばびょお」
「うぉ!? どした、潰れたカエルみたいな声出して」
「ゔー今はツッコむ元気もないぃ」
「そりゃ重症だね。で?」
「……フォロワーにブロックされた」
「……そんだけ?」
「そんだけぇ! 自分でも引くほど落ち込んでんの!」
「はぁ、まああんま気にしなさんな」
「無理ぃいいもうこれは失恋の域ぃいい」
「重傷だね。じゃあ失恋のキズは新しい恋で癒すのはどうよ?」
「新しい恋ぃ?」
「そ、俺とか」
「……お、おぉ」

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