柳絮

Open App

狭い部屋


右手を伸ばすと音楽プレイヤー。
左手を伸ばすと古い雑誌。
右足の先にゴミ箱。
左足の下に毛布。
卓袱台にはペットボトルとコンビニ弁当の容器。
本棚には読み飽きた漫画と小説。
全て手の届くところにある。
ガチャリと鍵の回る音がした。ハッとして身を起こす。ドアノブが動く。外の光が影に遮られる。
「ただいま。いい子にしてた?」
優しい声に、柔らかな絶望が湧き上がる。
手を伸ばすと彼は私を抱きしめて、首輪とリードを確かめた。

6/4/2023, 2:20:24 PM