8/17/2022, 2:26:39 PM
「みてみて!」
無邪気な声のする方へ視線を下げると、小さな手が差し出されている。
「ゆびわにしてみたの!ぴったりサイズよ」
精一杯広げた指のひとつには、食パンの袋を留めるプラスチック製のあれ。確かバッグなんとかいう名前の……そうだ、バッグクロージャー。今朝最後の一枚をトーストした時に袋と一緒に捨てたと思っていたが、どこかに落ちていたようだ。
「わぁ素敵!ぴったりね!」
見るからにフィット感の薄い指輪だが、彼女にとってはぴったりサイズなのだ。可愛らしさに笑いそうになりながらも、大げさに拍手をして見せる。それを見て満足気に走り出した背中の向こうには、お菓子の空き箱や変わった形の石、シールを剥がした後の台紙などが棚の上に飾られている。
また捨てられないものが増えたな。
困るような愛おしいような。いや、親としては正直困るが優位だが。
彼女は今日も彼女だけのキラキラに囲まれている。
8/7/2022, 6:30:03 AM
真っ先に浮かんだのは、学生の頃、自転車を漕ぎながら見上げた、真夏の太陽だ。容赦なくじりじりと照りつける陽射しと、蝉の声。蒸されるような、息苦しさを覚える夏のにおい。記憶の中の景色は、暑さで微かにゆらめく、いつもより明度の高い白っぽいものだった。
夏休み、部活の行き帰りで通る通学路を汗だくになりながら自転車を漕ぐ私が、ずっとその風景の中で私を見ている。