10/10/2025, 4:08:58 AM
秋恋
1943年 秋
私はあの時、最初で最後の恋をした。
勲章を付けて、背筋を伸ばし、歩いていた凛々しい
軍人さん。
名前も知らないあの人に、幼い頃の私の心は、
一瞬にして奪われた。
それからというもの、あの人を見かけた事は無かったけれど、。
何十年経った今でも、秋になると軍服の足音が脳裏をこだまする。
10/8/2025, 11:32:02 AM
愛する、それ故に
それ故に、周りが見えなくなっていた。
今思うと、わたしは大分おかしくなっていたようだ。
数十年来の友の言うことすらも無視し、
まだ付き合いも未熟な男に泥酔し、言いなりになっていた。
だが、愛というものは熱しやすく、過ぎ去りやすい。
今ではもう、いっときの過ちとしか思えない。
10/7/2025, 12:29:06 PM
静寂の中心で思いを叫んだ。
風に溶けるように消えていったけれど、
ほんの少しだけこの世界に反発が出来たようで、
ほんの少し、嬉しくなってしまった。
指折り数えるだけの日々の中で
ほんの少しでもいいから、変化を求めてしまう。
10/4/2025, 4:19:49 AM
誰か
誰か!
と、叫んでみたが辺りは何ら変わりなく、漆黒の中に朧気な明かりを灯している。
私が誰でもない誰かを呼んだとて、誰も私を認識しない。
隣に住んでいる隣人すらもどんな人だったか忘れてしまった。
名も知らない誰かは私のすぐ側に居て、何も言わずにただ潜んでいる。
その誰かもまた、私を知りはしない。
10/2/2025, 1:40:20 PM
遠い足音
近く、遠い、ずっと遠い。
そのはずだったけど、いつの間にか私の側にいて、
すぐに消えてしまった。
追いかけたかった思いをグッと押し殺して、
貴方の背中が小さくなるまで、見つめていた。