たそがれ。
人生で初めてやったMMOで、殆ど初めて出来た友達。って呼んでいいのかな。少なくとも私はそう思ってた。懐かしいな。
もうほんと、徹夜して遊んだ。使ってた端末めっちゃ熱くなるの。信じられないくらい。扇風機回しながら遊んだ。
当時の画質とか今考えると凄い荒いし、それでも楽しかった。十代って何であんなに寝ないでいられるんだろうってくらいずっとログインしてたな。
ギルド作って、待ち合わせして、お喋りして、レベル上げがてらミッションこなしてさ。
最後はまあ、なあなあになって、疎遠になって、そのキャラでお互い遊ばなくなった。寂しかったけどそんなもんかなっても思う。それでそのうち、そのMMOさえやらなくなった。
でも楽しかった。大好きだったよ。その後も違うMMOやったり、そこで他の人達と遊んだけど時折思い出してた。
どこでどうしているか連絡先も全く何も知らないけど、折角今またあなたを思い出したから。あなたの幸せを願います。タソガレさん。
あ、あとジークさんも元気にしてるかな。相変わらずゲームしてるのかな。
きっと明日も。
なんて始まる歌詞がありそうだななんて思って検索すると案の定なんかある。ありきたりな話ばかりが並ぶけど、どんな特別を望んだって所詮まあ想像つかねぇな、となるのが関の山だ。
最近カラオケ行ってないな。大体の人がそうだろうけど、2年は長いのか短いのかもうわかりませんね。
行きたい場所もやりたいこともあるのにまだ動いていいのか悩む。今日からいいよって言われても、そう急にやってまたどうのって話になるのはいやだ。
なくなるのか馴染むのか知らないが、そろそろわからないものかな。
静寂に包まれた部屋。
部屋ってわけじゃないけど。電車。
前に色々な所に出張する教室のサポートに入ってて、その内行く範囲がエスカレートして。片道電車2時間とかになった。家出てからじゃなくて、電車に乗ってる時間が2時間超える。先輩は二日続けて同じ所なら泊りがけとかね。割とザラにあった。
始業前のミーティングに顔出さなきゃいけないから、九時とかにそっち着いてなきゃいけない。仕事始めて頭の方はそうでもなかったけど、そうやってだんだん行く先が遠くなって。始発は流石に数えるくらいでも、朝5時の電車とかは余裕に。玄関開けると冬だと真っ暗。
朝の電車はいくら早かろうと普通に人がいる。まあ住んでるの都市部だったからかな。1両に10人とか、行きは人が多い。
これが帰りになると、ひとりもいなくなる時があった。夜の10時過ぎとかね。ボタン押さないと扉が開かない区間辺りは割と顕著。30分くらい車両にひとりとか。そういう時って、次の駅までも遠いからアナウンスも無くて電車が動く音以外静かで少し怖い。
勿論本当にたまたまで、大体隣の車両には何人かいたりするんだけども。みんな階段側とかに寄るんだと思う。何にも考えないで座るとそうなる。
トンネルを抜けるとなんて話じゃないし、どちらかというと冬場はひとりより人が沢山いてくれた方が車両は暖かくていいよね。
別れ際に。
ばいばい。ばいばーい。ばいばーーーーい。
といつまでも続いて、母親にもう静かになさいと止められる。それでも姿が見える間はお互いに手を振り続けて。
私は人数が少なかったから、どちらかというとみんな静かな幼稚園だった。朝母親と離れる時にぐずる子も見たことがなかったと記憶している。今、近所にあるのは保育園で割と本気で泣き叫ぶ声とか聞こえる。みんな、母親大好きだな。
ばいばいの掛け声は何だかとても面白い。そうしてぐずった子とはきっと違う子だろうけど、とても楽しかったんだろうって分かる。何度も何度もお互いが叫び合いっこして、それも遊びなんだろうなって。
通り雨。
小学生の頃、近所にすごく広い公園があった。ジャングルジムがあったとこ。
多分直線で100メートル走れるくらい。端の方にはちゃんとブランコまであったし、学校が終わったあとはみんなそこで遊ぶ感じ。
一度だけだけど、すごくおかしな空だね。って誰かの言った夕方があった。明るいのに薄暗い。一枚変な色のフィルターがかかったみたいな色だった。ミルクティーみたいな、でも5時近いから薄いピンクも入っていて、とにかく変な色。
「だめっ! こっち来て!!!」
気付いたらザッと雨が降ってきていて、みんなが逃げ惑う。その時にまた誰かがそう言って、声を頼りにその子のそばへ集まった。
「なにこれ!」
「すごーい!」
振り返ると公園は真ん中で真っ二つに割れていた。雨の降る世界と、私達のいるそうじゃない世界。
今でこそそれがどんな気象状況で起きるのかとか分かるけどその時は本当に不思議で、ギリギリまで近づいて手を突っ込んで。なんて、みんなでしてみたり。
変な色のフィルターの掛かった雨で真っ二つの世界。あれほど変な色の空を見たのはこの時だけだったな、と今振り返っても思うくらい。