仕事帰りに、買い物でもして帰ろうと足早に歩いていると。公園で遊ぶ娘が見えた、もう一人で遊びに来れる様になったんだなぁ〜。お友達とも仲良さそうにしている。
少し寂しい気持ちも有るが、良い事だと納得させる。
買い物を終え、公園を通り掛かると娘が抱き付いて来た。
その時、さぁっと風が吹き付ける娘を抱きしめ。
秋風さんありがとう、まだまだ娘は私の腕の中。
朝靄の中を歩きながらこんなに周りが、真っ白に染るのを不思議に思いながら歩く。
一人では少し心細いが、頼もしい愛犬が先頭を歩いてくれる。早すぎた散歩に後悔しながら、歩いていると先の方に誰か歩いている。
愛犬が低く唸る、何だろうと目を凝らして先を見る。
狐だ、真っ白の毛の狐だ。
なんて綺麗な毛並みなのだらうか、思わず見惚れていると。
愛犬が後退りして来る、おそろしくなったのだろう。狐は、見透かしたように近付いて来る。
すーつと近付くと、愛犬には眼もくれず足元に座り込む。
よく見ると、哀しげな目をして見上げている。
そして、すくっと立ち上がり離れて行く。
ふっと耳元に、また会いましょうと聴こえた気がした。
スリルとサスペンスの人生だ、明日が来るのか来ないのか。
それさえも解らない状況に追い込まれると、人は思い掛けないエネルギーを出す。
今日も又、明日は来るのか来ないのか?
本当にスリルとサスペンスだ、そんな状況の中でも生きている実感が有るのがご飯の時だ。
敵も味方も、森や林から出てきて車座に座りご飯だ。
今日は、川で取れた鮎を焼いている!
素晴らしい鮎だ、だがアイツに焼けるのか敵も味方も目を離さずに見ている!
あ~スリルとサスペンスのご飯の時の開幕だ。
ベッドにゴロゴロしていると、祖母からラインが来た。
何してるの?寝てるって、伝えると。
今日はいい天気よ、散歩して来たらとライン。
行きたくない理由を、ダラダラ伝えると。
一言返ってきた、散歩行くよと!
窓の下から声が、行くよ〜と。
飛行機の距離の祖母が、窓の下に居た。
車椅子の祖母が、鉄の翼に乗ってやって来た!
仕方ないなぁ〜、跳べない翼を畳んで飛べる翼に替えて散歩に行くかぁ〜。
ススキを取って来てって、母から頼まれたのでテクテク歩いている!
周りは全てススキだ、自分より遥かに大きいススキの林の中に居る。
カサカサ、カサカサと風に揺れるススキの中で一番立派なのを刈る。
抱えて帰ると、立派なのを刈って偉い偉いと褒められる。
ススキは、懐かしい様な寂しい様な複雑な物だ。
もう誰も褒めてくれないし、一緒にお月様を見てくれる人も居ない。
でも、お月さまは変わらずに居てくれる。