月海月

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11/20/2025, 9:37:30 AM



どこかモヤモヤとした感情で、ビル風の強い通りを歩いていると
ぶわり、と一際大きな向かい風。

寒さに縮まる身体を抱いた手に残るのは、小さなあかぎれ。

“どうやら鎌鼬が通ったようだ”

そんな事を思案すると、抱えていたモヤモヤは
風に乗せられ飛んでいった


#吹き抜ける風

11/18/2025, 12:49:27 PM

「いらっしゃいませ。…おや、あなたでしたか。」

「え?私…ここには初めて…」

「あぁ…すみません、人違いでした。」

「あの、ここに来れば、“幸せ”になれると…」

「ええ、では失礼しますね…」

施術が終わった客の背中を見送りながら
客の記憶を封印し手元で光を弱く放つランタンを棚に納める。

「あの方は…もう来られないでしょうね。」


数日後、町外れで魂が抜けたように虚脱する客の姿が見つかった


#記憶のランタン

11/17/2025, 12:56:26 PM


“今年の冬はそんなに寒くしないでください”

祠にお供え物と添えられた手紙を読んで、
困ったように微笑む冬将軍


#冬へ

11/16/2025, 10:39:15 AM


柔らかな光に包まれた、月夜の逢瀬。

芒の影に身を寄せて伝わる温度と心拍と

「月が綺麗ですね」

死んでもいいわ。と耳に残る声。

月と2人だけの知る秘密

#君を照らす月

11/15/2025, 12:11:53 PM

「さっきまで晴れてたのに…」
お気に入りのワンピースの裾を摘んで、
小さなバス停の軒先に駆け込めば
しっとりとした湿気と雨の匂いに包まれる。

小雨を降らせる雲を見上げれば
遠くの山肌に下りる天使の梯子。


#木漏れ日の跡

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