明日、もし晴れたら
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「あなたの力になります」
神を信じない私の前に現れた神は、男性なのか女性なのかわからない風貌で背が高かった。
白い布をまとい、金色の髪は腰の辺りまで伸びていた。
想像する神様の通りだと思い、同時に不信感で寒気がした。
「神が私の願いを叶えたところで、私に何のメリットがあるというの?自分の力ではないのに何か喜ぶことが起こるの?」
「あなたのお母さんの病気を治しますよ」
神は、抗がん剤治療中の母の癌を消すことができるという。神は得意げな顔をしたのでイラッとした。
「神に振り回される人生ですから、力になると言われたところでまた振り回される。運命は私が決めます」
#誰かのためになるならば
そう思って生きてきた。
自分の何気ない小さな行動が、誰かのためになるならばと。
褒められることもなく、一日一日が過ぎていくだけ。
今日も汚れていたのでゴミ箱の周りを片づけようと重い腰をあげた。
入らなかったテストの解答用紙が丸まっている。
「12点」
誰もいない朝の教室に、自分の声がよく響いた。
キンと冷たい教室にガサガサと用紙の紙音が響く。
「それ、俺の」
振り返ると見たこともない険しい表情で、ガタガタと椅子をひき大股で座り込んでいた同じクラスの男子がいた。
名前なんて呼ぶこともない。
声をかけることもない。
私は何もなかったかのように自分の席に座った。
「勉強教えて」
うつむいて下を向く私の前に座り直した男子は、私の返事を待つこともなく教科書を広げた。
朝のたった数分の時間。
朝光が差し込むと少し暖かい。
「ありがとう」
男子はたった一言、お礼を言うとパタンと教科書をとじて去っていった。
また教室に静けさと冷たさが戻る。
「名前なんだっけ」
他人に興味がないので名前すら覚えてない。
初めて名前を知りたいと思い、捨てていたテストの解答用紙をのぞきみた。
名前はわからなかった。