「君は、卒業したら僕のことなんて忘れてしまうんだろうね」
「どういうことだ?」
「そのままの意味だよ」
「明日も、来年も、何十年先も、お前はオレの隣だろう?」
二次創作、BL注意、🌟🎈
ああ、この気持ちの昂りは恋だったんだ。気付きたくなかった。僕のこの感情は君に必要無い。この気持ちは墓場まで持っていくとしよう。そう、決めたはずなのに。
「好きだなあ」
ハッと口を押さえる。君の隣で、ふと溢れ出てしまった。君の顔が見れないよ。僕を拒絶しないで、なんて我儘聞いてもらえるだろうか。頭の中がぐるぐる回っている。こんな失態、初めてだ。彼は相変わらず口を開かない。今日はもう、帰ろう。振り返り、走り出したはずが手首を捕まれ動けない。
「類、オレ───」
「聞きたくない!」
「あれから何年も経ったな」
ふかふかのソファに腰掛け、君はアルバムを愛おしそうに見つめている。片手でアルバムをめくり、片手で僕の頭を優しく撫でる。
「あの時は、君に拒絶されるのが怖くてしかたがなかったんだ。
...でも、あの時君が僕を引き止めてくれて本当に良かった」
今でも鮮明に思い出す。いつもの大きな声で僕に愛を伝えてくれたことを。
『僕は君に恋愛感情を持っているんだ。隠そうと思っていたけど、もう一緒には、いられな』
『オレの話をちゃんと聞け!!!!
自分で勝手に終わらせるんじゃない!!!』
『司くん...』
『類、オレもお前が好きだ!!
どうアクションを起こそうか悩んでいたが、類も同じ気持ちだったとはな!』
にかっと星が舞うように微笑み、手を握られ僕の冷たい手がじわじわと温かくなっていくのを感じる。
ああ、何て都合のいい夢なんだろうか。司くんなら、この夢に永遠に浸らせてくれると信じて、僕は彼の手を握り返した。
『もう一度、言わせて欲しい。
司くん、大好きだよ』
あの時の僕、それは永遠に幸せな夢じゃなくて、ただただ幸せな現実なんだよ。
「司くん」
猫を撫でるように僕を愛でている彼の名を呼べば、その眩い程に綺麗な瞳が僕を見詰めてくれる。あの時の感謝を込めて、
「愛しているよ」
自カプ🌟🎈
「明日世界がなくなるとしたら、どうする?」
昼休みの屋上で少し冷たい風に吹かれながら、真面目に司は問いかけた。これは映画に影響でもされたかな、と思いつつ僕はその問いについて考える。
「そうだね、僕は盛大なショーがしたいな。
最期はみんな笑顔で大団円だ」
そうか、と一言。類が明るい口調で答えても司の表情は固いまま。いつになく真剣な顔で僕は彼の横顔にしばし見入ったあとまた大きなメロンパンにかじりついた。今日は疲れているみたいだし、爆発はやめておこうかな、練習も休みだから気晴らしにショッピングでも、とあれこれ考えているとやっと司が口を開いた。
「オレは類と2人きりのショーがしたいと思ってしまったんだ」
2人きりの、ショー。
「人々を笑顔にしてこそのスター、なのだが。
類と、オレだけのショーをしながら世界の終わりを見届けたいと思ってしまったんだ」
ずっと手元の弁当を見詰めていた司の目線が、いつの間にか類を捕らえて逃がさない。何かを決心したような、そんな瞳だった。
「そして、朽ちゆく世界で類とキスをしたいと、思った」
「へえ、司くんが僕とキス」
なかなか面白いシチュエーションだ、と想像力を働かせたところで疑問が生まれる。僕で、いいんだ
「そこまで考えて、気が付いたんだ。
オレは類に恋をしているらしい」
司の整えられた指先が僕の頬に触れる。割れ物を扱うよりも優しく、その瞳とは対照的に少し怯えたような怖がっているような触れ方に、また彼が愛おしいと感じる。
「なあ、類」
「オレと2人きりのショーをして欲しい」
強い強い光に焦がされてしまわないように。ゆっくりと目を合わせた。司の瞳は眩く輝いて、揺れている。小さな子供のように大きく明るいその瞳を安心させたくて、司がしてくれたように頬を撫でる。
「司くんが輝くなら、僕にできることはなんでもするさ」
目を瞑り、ゆっくりと口付けた。もし明日世界がなくなるのなら、僕たちは人目も気にせず路上てラブロマンスショーをしているだろう。自分達が気持ちよくなる為だけのショーを。