「神様だけが知っている」
「そろそろ、教えてくれても良くね?」
「まだ、そのときじゃないからのぉ」
「アタシ、アンタが人間じゃないこと知ってるんだけど」
「バレておったか」
「アンタが神様の使いの狐ってことも知ってるから」
「最近、力が弱っておるのぉ」
「アンタなんのために私のそばにいるの?」
「なんでじゃったかのぉ」
「アタシ、知ってるから」
「それも知っておるのか」
「約束してね。アタシのために死なないって」
「耳も悪くなってきたかものぉ」
「アンタ、設定では高校生じゃないの?」
「どうだったかのぉ」
「約束、守ってよね」
「神様が許してくれるかのぉ」
「そのときは一緒に逃げようよ」
「連れっててもらおうかのぉ」
「約束だから」
「約束だからのぉ」
「入道雲」
「魚」
「え?どこにいるの?」
「ドーナツ」
「ん?食べたいの?食べる?」
「綿あめ」
「綿あめは流石に持ってないなぁ」
「かき氷」
「鞄に入れてたらぐちゃぐちゃになっちゃうよ」
「雲」
「えー。気づいてくれたの?この雲ストラップ!」
「怪獣」
「ウギャア!」
「さっきから何言ってるの?」
「あんたこそ何いってんのよ」
「雲だよ。ほら、あれが魚。そんで、ドーナツ。横に綿あめ、かき氷。でも、これ全部雲なんだよなぁ」
「ふーん。怪獣は?」
「怪獣は本当」
「あっ、ホントだ。……ぎぃやぁぁぁ!」
「ここではないどこか」
「行ってきます」
扉を開けようと手を伸ばす。
目的地なんてない。
ただ遠くに行ければいい。
ここではないどこかへ逃げ出したかった。
伸ばした手は、何も掴まなかった。
「無理だなぁ」
いじめられっ子の私に外に出る勇気なんてない。
ブルーライトを浴びながらネットの世界に飛び込む。
ただここではないどこかへ行きたかった。
「君と最後に会った日」
友人でも、知り合いでもなくて
私が勝手に好きなだけ。
連絡先も知らないし、今どこにいるのかさえ知らない。
夢に出てきた貴方は、あの頃より大人になっていて
白いドレスを身に纏い幸せな結婚式をあげていた。
横にいるのはもちろん私ではない。
私はただ君が幸せであることを祈っている。
「繊細な花」
ヒロインは繊細でなければいけない。
弱くなければいけない。
いじめられてもただ受け入れなければいけない。
ヒロインは繊細ではなければいけない。
変わることを求めてはいけない。
いじめられっ子から逃れることは許されない。
ヒロインは繊細でなければいけない。
でも、そんなヒロインならこちらからお断り。
「アタシをいじめようなんて100年はやいんだから」
ざわざわと騒ぎ出すクラスメイト達。
キャラが変わったんじゃない。
逆ギレなんかじゃない。
「私は私の花を咲かせる」
心の中に繊細な花を隠し持ちながら。