6/22/2023, 10:08:39 AM
「日常」
「おはよう」
「……」
また誰かのおはようを無視してしまった。
「おはよう」
「……」
正確には無視ではない。何故なら私に向けられた挨拶ではないのだから。
「おはよう」
「……」
もし、誰かに宛てられた挨拶を私が返すことが出来たなら。いや、私から挨拶を届ける事ができたなら。
大きく息を吸い込む。
「おはよう」
小さな声で呟かれた言葉は誰に届くこともなく消えていった。
これが今までの日常。
「よっ。相変わらず暗い顔してるねー。何悩んでんの?」
「…おはよう!」
「はい、おはよう」
これが私の新しい日常。
6/22/2023, 9:57:31 AM
「好きな色」
「どんな色が好き?」
沢山の色鉛筆を広げた先生が言う。
「赤」
私は、小さい声でそして力強く言った。
先生は、赤い鉛筆を持ち。サラサラとりんごの絵を描いた。
「次はさくらんぼ描いて」
「わかったわよ」
先生は、赤い鉛筆でさくらんぼを描いた。
「次は何がいい?」
「いちご」
「ふふっ。いいわよ」
先生は、赤い鉛筆でいちごを描いた。
「これじゃあ赤い鉛筆が一番最初になくなっちゃうわね」
「緑もでしょ?」
「そうね。葉っぱや茎は緑だもんね。歌の通りにはいかないものね」
「歌?」
先生は、息を吸い込み歌を歌い出した。
「どんな色が好き?」