「自転車に乗って」
「それ、俺のヘルメットだ。返せ」
「やだねー」
「なんでだよ」
「だって、タロちゃん。これ被ったら、自転車でぴゅーんでしょ?やだもん」
「はぁ、しょうがねぇなぁ。歩いていってやるよ」
「サイコー。タロちゃん!」
「そうか?」
「病室」
こんにちは。
返事はしてくれないですね。
えぇ、恐くはありませんよ。
見えないからではありません。
なんとなく察しているからと言ったほうがいいでしょうか。
私は、いつ頃連れて行かれるのでしょうか。
いえ、連れて行ってもらえるのでしょうか。
最期に家族と連絡がとりたいなぁ。
それくらいは待ってやる?。案外人がいいんですね。
「お祭り」
「ごめん、待った?」
「ふぇん、ふぇん」
「まず、焼きそば置こうか」
「全然待ってねぇよ。それより1人でめっちゃ祭、楽しんだから逆にちょっと罪悪感的な?」
「とりあえずそれ、持つの手伝うよ」
「マジ?サンキュ。最悪食べていいからさ」
「これは何?」
「8分の2になったたこ焼き」
「それは?」
「食いにくい部分だけになったチョコバナナ」
「これは?」
「芯だけになったりんご飴」
「なにこの汚いの」
「一回落とした水飴」
「ほぼゴミしか残ってないじゃない」
「紅生姜だけになった焼きそばもあるけど」
「いらないわよ!」
「友情」
「俺問題出すわ」
「ヒント」
「まだ何も言ってねぇよ」
「ごめん。私せっかちだから。で、何?」
「問題です。男女の友情は成立するでしょうか?」
「成立するでしょ?しなかったら私達ってなんになるの?」
「そうだよなあ。成立するよなぁ」
「何?アンタ私のこと好きとか言うつもり?」
「バッバカちげぇやい」
「ふーん。別に私は成立しなくてもいいと思ってるけど」
「それどういう意味?」
「鈍感男が」
「ちょっと待ってよ!!」
「花咲いて」
「一向に芽が出ないなぁ」
「何を言ってるの?綺麗な花じゃない」
二人でひっそりと育て始めた。種は長い月日をかけて花が咲いた。
「俺のことだよ。漫画家目指すっていったものの、箸にも棒にも掛からない」
「貴方がヒモなのは今にはじまったことじゃないでしょ?今更貴方にサラリーマンになってなんて言わないわよ」
「俺、お前と結婚して良かった」
「私が高給取りで良かったわね」
「本当にな」
いつか芽が出るときまで、そしてそのあとも二人でいれたらいいなって思った。