(酸素)
人より何でもできてしまうものだから、
頼られる事が多かった。
別に苦ではなかった。
けれど、手助けするのが当たり前のようになってきて
動き回る事が多くなってきた。
それでも私には全てできてしまうのだけど。
当たり前と思うのと同じに、少し疲れる事もあって。
そんなおり、君と出会った。
他の人とは違って、何でも自分でやる君。
私ほどではないけど何でもこなす君。
きっと好奇心が旺盛なのだろうと思った。
気が合うかもしれない、と少し期待した。
その、きらきら眩しい君を見ながらそう思った。
…出会ってから数年、
私にとって君は酸素のようなものだった。
そう思っていた。
君がいないと生きていけないと思っていた。
…実際君がいなくなっても、私は生きていた。
心の底から悲しい、寂しいけれど、
叫びたくなるほど狂いそうだけれど、
私は君の分も生きていかなくてはならなかった。
……そう納得する自分の頭が嫌でたまらなかった。
君がいなくなった後、
こんな脳みそ酸素不足で死んで仕舞えばよかったのに
(届かない……)
貴方を超えたかった、
生涯手が届くことはなかったけれど。
貴方から見た私は愚かだったでしょう、
貴方への羨望、妬み、怒り、醜かったでしょう。
貴方は呆れ果てていた事でしょう、
嗤っていましたものね。
…あァ、それでも、
最期、私はとても穏やかな心中だったのです。
手を伸ばした貴方の、その顔をみて。
貴方でもそんな顔をするのですね、
何故私に向けてなのかはわからないけれど。
そんな顔をする貴方は見た事がなかったから、
ざまァみろと嗤いたかったのだけれど。
声が、でなくて。口角を上げることしかできなくて。
貴方から見た私はどの様な顔をしていた事でしょう。
……醜くなければ、いいのだけれど。
(木漏れ日)
麗らかな日差しがはいる窓際のソファに、
貴方の体温を隣に感じながら微睡むことの
なんと心地良いことか。
(ラブソング)
君は料理を作りながら
たまに鼻歌でなにかの曲を歌っている。
君の料理を手伝いながらそれを聞くのが
酷く楽しかったし、癒されていた。
ふと気になって、曲を調べた。
有名なジャズシンガーの曲らしい。
デュエットの。
…君の鼻歌にあわせて歌ったら、
君はどんな顔をするかな。
(すれ違う瞳)
時折君と瞳があう。
笑っている時、
惹かれるものを見た時、
情けなくも痛みに潤んだ時、
…君の微笑みを見た時。
けれど、決まって瞳があったと思えば、
君はすぐ逸らしてしまう。
君の黒曜石のように黒くきらきらしている、
そして優しげな眼差しを私はずっと見ていたいのに。