僕は昆虫採集が好きだった。
ビビりだし、運動神経も良くなかったけど、
他人に気を使わず自由に動きまれる。
あの時間が何より僕の心をふるわせた。
だから、昆虫採集行く前は張り切って準備をしたものだよ。もちろん虫除けは欠かさず振りまいて、汗をふくためのタオルを首に巻いた。夏場で暑いと言うのに害虫対策で長袖長ズボンをきたんだ。
あとは帽子。僕のお気に入りの帽子はいくつかあって、気分によって変えてたんだ。帽子をかぶると「今から虫取りにいくぞ!」って感じがして、好きだったんだ。
今では、そんな虫取り小僧だった僕も高校生。暑さは厳しくなるばかりだし、年齢的にどこか恥ずかしくていつのまにか、昆虫採集にはいかなくなっていたけど。
この冬が終わったら、また行こうか。
あの心震わせる場所へ。
もちろん、帽子をかぶってね。
もし、感情に色があるなら。
あるとするなら、
喜びの色は黄色?怒りは赤、哀しみは青か。楽しみは緑かな?
こんなように少なくとも感情に対する色のイメージはあるみたいだ。
でも、その感情が溢れ出した時に出てくるはずの涙はいつだって透明だ。
色とりどりな色水が、目から出てくることは無い。
もし、もし、感情に色があるなら。
感情の色は記憶として脳にこびりついて、
それがろ過された物が僕たちの目にする
透明な涙なのかもしれない。
どれだけの日を過ごせば、
どれだけの努力を重ねれば、
どれだけの愛情を注げば、
あなたまで届くだろう。
貴方はどこにいる?
姿は?どんな輪郭をしていて、どんな匂いがするんだろう。あなたの確かな感触はいつか知れる?
どんな目をしてるんだろう、
どれくらいあたたかいんだろう。
でも、声。声は知っている。暖かくて、優しくて、僕の居場所をくれた大好きな声。
きっと、自分がどこにいてもあなたはその声を届けてくれる。
声に、沢山の感情を乗せて届けてくれるんだ。
だから、僕は貴方が大好きで、大好きで、愛おしく想っている。
それなら、僕は何を返せる?何をあなたに届けられる?
どうすれば僕の愛を届けられる?
あなたの声に愛を感じる度、何度も何度も繰り返し考えたけどまだ答えは出ない。
アイデアはたくさん出したけど、どれも貴方に対する愛には及ばない。こんなものでは、私の貴方への愛は伝わりきらない。
でも、行動しなきゃそれすら伝わらないんだ。
だからね、毎日、貴方に届けるために試し続けることにしたよ。きっと、これでいいんだ。
どうしても、恋しくて泣く日もあるよ。上手くいかなくて悲しい時も、悔しい時もあるよ。
でも、貴方はそんな時、声で支えてくれるでしょ?
だから僕も届け続けるの。
お互い、無償で分け与える、これこそ僕たちの愛の形だって思ったよ。
いつか、いつか。愛が実るその日まで。
あなたのもとへ、僕は愛を届け続ける。
これは夢だ。
私はひとまず椅子に腰掛け心を落ち着かせる事にした。ベッドの枕元には本や飲みかけのペットボトルが置かれ、デスクの上には昨夜イラストを描いた時に使ったペンがそのままで散らばっている。お世辞にも綺麗とは言えない、いつもの私の部屋....の中に、私が一瞬で夢だと決めつけるほど異質な存在があった。
「どうしたんだ?急に座って、変なもんでも食って腹下したか?w」
この腹立たしい男がその異質な存在の正体である。こいつは小学校からの付き合いになる私の幼なじみだ。一言余計な事を言わないと気が済まないという、いい性格をしているが、私が苦しい時は黙ってそばに居てくれるような優しいやつだ。
ーーー去年、病気で亡くなっている。
「今日はファンタジー映画持ってきたんだよ。早く観ようぜ。」
あぁ、こんなふうに一緒に映画を見ていたな。映画の種類は様々だったが集中力がない私たちは途中でいつの間にか寝ていることが多かった。テレビがついて映画が流れ出す。私は隣に腰掛け、映画を見ている幼なじみをしばらく見つめていた。画面を眺めていたかと思うと、もうこくりこくりと眠そうにしている。私の意識も朦朧としはじめ、夢の終わりをつげているようだった。
お願いだから覚めないでくれ。ずっと、ずっとこのまま...