あのお方の黄金の瞳に見つめられると、いやだ、恐ろしいと思う気持ちとは裏腹に、瞳からは歓喜の涙が止まらない。
そうして身を固まらせているうちに、あのお方はふいと目を逸らしてまるではじめからおれなんて存在しなかったかのように優雅に去っていく。
ねえもう一度おれを見つめてください、おねがい、なんでもあげるから。なんだってあげる、あなたの視界に入るためなら。そう願うほどにあのお方は遠のいていく。おれの存在なんて知りもしないうちに、あのお方は遠のいていく。
お題「見つめられると」 おまねむ
あなたの特別の席に次に座るのは絶対におれだと息巻いていたのに。
ああそもそもそんな席など存在していなかった。
ではあなたがおれに言った「きみは特別だから」はすべてうそだったと言うのですか?
好きでもないのに、誰にでも、あなたはそう言うのですか。
その少女のような囁き声で。屈託のない笑みを携えて。
好きでもないのにあなたはそう囁くのか。クソッタレ。おい、はやく、その席をおれによこせ。
お題「好きじゃないのに」 おまねむ
夢を見ていました。あのお方がおれをあたたかく見下ろしては「きみが特別だよ」と微笑む夢を。
とんだ絵空事です。現実では叶うはずのないばかげた事象です。
でもあのお方が夢から醒める直前……「きみにだけ、とくべつ、あげるね」とおれの手のひらにそっとのせた小さなあめだま。
拳を開くとそのあめだまが夢の中のままひっそりとそこにあるのです。
ばかげているとお思いですか。ですがたしかに、夢から醒めてもおれの手のひらの中にあめだまはあるのです。あのお方がくれた特別なあめだまが。
お題「夢が醒める前に」 おまねむ
事の不条理にさめざめと泣いていると、あの人はおれの涙をそうっと拐って「かわいい顔が台無しだよ」と言って笑った。
あんた、おれの顔なんか覚えちゃいないだろ。おれの名前だって一向に覚えねえくせに、なにがカワイイかおだ。
あんたがいちばん不条理だ。この世のなによりも不条理で残酷だ。だのにあんたっていうのは、おれの理そのものだ。おい、助けてくれよ。助けてくれるのもあんたなのだろ。
なんたってあんたはこんなに残酷で正しくて不条理なのだ……。おい、助けてください。
お題「不条理」 おまねむ
あの人が「大好きなきみに」とおれの額にキスをする
しっている。愛おしげに細められたその瞳も、頬を撫でるこの手の暖かさも、すべてはまやかしだ
おまえの1番になど誰もなれないことは、おれがいちばんによく知っている
それでもずっと求め続けた言葉だ ずっとそれが欲しかったんだ
うそつきめ、心持ちとは裏腹に瞳から歓喜の水が止まらない
うそつきめ でもそれがずっと欲しかったんだ……
お題「大好きな君に」 おまねむ