熱い鼓動
「あっつ〜、暑すぎてとけそー」
浴衣を着た君がもうぬるくなったであろうチョコバナナを片手にそう言う。
「お前なんかいつも溶けてるようなもんだろ」
「はー?黙れし!笑」
幼稚園の頃、隣に引っ越してきた君と母親に連れられ一緒に夏祭りに行った時から、俺らは毎年近所の夏祭りに行く。
何年もほぼ毎日顔を見ているもんだから、あいつに特に可愛いだとかそういう感情を持つことは無いが、顔は整っているので浴衣を着て頭からつま先までちゃんとした格好をしているのを見ると可愛いとは思う。
「今年は特に人が多いな」
「そうだね〜やっぱここの花火はすごいからなぁ」
「あ、そろそろ花火の時間じゃん!場所取りしないと」
「おう」
人が多くてはぐれそうになりつつも花火がよく見える場所に行く。
去年までは穴場だったのに今年はもう少ししか空いていない。
「去年とは比べ物にならない人だかりだな…」
「あそこの小さいところしか空いてないじゃん!」
「まーしょうがないな、そこ座ろ」
去年は割と大きいスペースを確保できていたが、今年は小さなスペースしか取れなかった。
少し手を広げれば君と手が重なり合ってしまいそうで、何も思わないはずなのに少しドキドキしてしまう。
「あっ、花火始まった!」
「写真撮ろ!」
毎年毎年来ているのになぜ写真を撮るのか分からないが、昔と変わらない眼差しで花火を見る君を見ると少し安心するところもある。
「んー、もうちょいこっちかな…」
「…。」
君は写真を撮る事に夢中で気づいていなかったが、気付けばもうお互いが横を向けば唇が触れる距離にいた。
花火はドンドンと音を立てながら広がっていく。
暑さのせいか、君のせいか、俺の心臓は熱い鼓動が鳴っていた。
虹の始まりを探して
僕は君の幼馴染でありながら、君に恋をしてしまった。前までなんとも思わなかったその笑顔も、いつしか意識してしまうようになってしまって、僕は少しだけ君にアピールをした。そんな事をしていたらいつの間にか1年が経ち、僕らの関係は変わらないまま。
ある休日、君に呼び出された。
そんなことは無いと思いつつも少し告白を期待する。いつもよりも少し格好をキメて、君に会いに行く。
いつもと変わらない君の口から出た言葉は思いがけもしなかった言葉だった。
「虹の始まりを探しに行こう」
馬鹿らしい、とは思ったが、そんな所も君らしくて好きだ、なんて心の中で思う。
君が言うには、虹の始まりを見つければ願い事がひとつ叶うとのこと。
「願い事ってなんなんだ?」
「んー、好きな人と結ばれたい!かな!」
「す、好きな人なんかいたのか。お前らしくない。」
好きな人がいたのか…。
…もう、叶わないじゃないか。
好きな人に想い人がいたことにテンションが落ち込むが、君と「虹の始まり」を探しに行く。
数時間探しても見つからない。
見つかるわけが無いとは思っていた。でも、君といる時間を増やしたくて口出しすることなく付き合った。
「んー、見つかんないな…」
「いつのまにかもう虹が出てる時間じゃないな。」
「うーん、願い事は自分で叶えろってことかな?」
「神様も優しくないな〜!」
何事もポジティブに終わらす、君のそんなところが好きだなぁ、なんて考えながら君の横顔を眺める。
君は少し黙りこくったあとこう言った。
「じゃあ、叶えるね。」
「私と付き合ってください。」
ーー
お久しぶりです🙏💦長らく更新できてなくてすみません🥲
今回は長めに書いてみました。
ひとひら
『舞う桜の花びらをひとひら取れたら願いが叶う』
なんていう迷信を信じて、帰り道に桜の花びらを取ろうとしていた小学生のあの頃をふと思い出す。
結局、1枚も取れなかったけど。
「…あ、取れちゃった。」
願い事…
「またあなたと会いたいな。」
もしも会えたら、また桜の花びらでも取って笑い合おいたいなぁ。
なんて、叶うわけが無いのに。
風景
小学生から高校生まで。
ずっーと見てきたこの風景。
ここから離れるのは、嬉しいけど、ほんのちょっぴり寂しい。
4階の病室の窓から見るのはもう終わり。
今度は"上から窓越しで"じゃなくて、近くから肉眼で見てやるんだから。
君と僕
僕が言う。
「次のデートは何処に行こうか。」
「遊園地……いや、新宿でもいいな…」
君はこう答える。
「ねぇ、なんでそんなに人混みが好きなの?初めてのデート以来ずっと家か人混みじゃない。」
「ふふ、なんでだと思う?」
「……変なの。」
人混みが好きな理由。
それは、"手を繋げるから。"
君と僕が繋がり続けるための手段。
ー
超おひさしぶりです…笑
不定期ですがまた始めました。