何でもないフリ No.7
幼馴染みの、亮介。
出会って10年、私たちも大人になった。
久々に公園のベンチでたまたま出会って、亮介はコーヒー片手に手を振って来た。
昔は二人ともコーヒー苦手だったんだけどな。
改めて大人になったことを実感する。
どこか昔の亮介の面影があったから、すぐに誰か分かった。デニムの羽織がよく似合う。……なんだか照れくさくて、褒めることは出来なかったけど。
ベンチで二人並んで座って、しばらく話をした。
最近どう?とか、身長伸びたね、とか。しょうもない話ばかりだったけど楽しかった。
急に亮介の体が固まったから、真剣な話なんだと思って、私もつい固まった。亮介の口から出たのは、恋愛相談だった。
え、って思った。
何でか分かんないけど。……すごくショック、だった。
「隣人なんだ」って言ってた。
私は固まったまま何も言わなかったから、亮介はどうした?って聞いてきたけれど、ううん、なんでもないよ、って笑って返した。
何でもない。
……はず。
仲間 No.6
仲間って、なんだっけ
笑い合うもの
助け合うもの
仲を深め合うもの
時々けんかをするもの
ライバル視し、ライバル視されるもの
相手のようになりたいもの
裏切られるもの
傷つけさせられるもの
外されるもの
いらないもの
つらいもの
悲しいもの
…あれ。
どこでまちがえたのかな
ありがとう、ごめんね No.5
「ずっと…その……好きでした!」
彼の顔色を伺えば、なんて言われるか分かった。
でも、どこかで信じてる自分がいたから。
大丈夫だ、ってどこかに思う自分がいたから。
…こんなに、彼の一言が重かった。
部屋の片隅で No.4
寒い…冷たい…
部屋は暖かいはずなのに
涙でぐちゃぐちゃな瞼が重い。
一歩も動きたくない
いきなり「別れよう」なんて
そんなの、ひどいよ
クリスマス、もうすぐだねって笑ったあなたが
馬鹿みたい
温かかったあの日々が一気に流れ込んできて、目から涙となって絶えず流れる。
きょう一晩は
部屋の片隅で泣かせて
逆さま No.3
覗き込んだ川に映る私は
夕日に照らされて輝いていたから、思ったんだ
このワタシなら
優しくって、可愛くって、
誰にでも愛されて。
妹も親も大切に思っていて
友達もいっぱいいて
…もし、私もちょっと生まれる時間や場所が
ちがったなら。
ここに映るワタシみたいに
輝く人生だって、あったのかな。
川に映るワタシに「ばいばいっ」っていって、
ワタシを追って飛び込んだ。
冷たくて痛かった。
水の中には、もうワタシがいなかった
さっきまで、手で掴めそうなところで
ほほえんでいたのに