もう一度だけ、あなたに巡り会えたら私はきっと恋に落ちるだろう。
そして、かつてと同じように日々を重ねていくのだろう。
二本の線が交じり合い、一つの綱を作り出すように。
その終として、あなたに、愛するあなたに私の想いを告白して、愛を育んでいく。
運命の赤い糸のように、人生を交差させていく。私の糸とあなたの糸とで。
織り合わせて一枚の布地にする。二人の思い出で飾り合わせて。
何かが二人を引き裂こうとしても、二人の糸で縫い合わせていけばいい。
だから、不安に思わなくていいんだ。
これからも、二人で縫い合わせていこう。
人生というタペストリーを描き紡ぎ出していくためにーー。
奇跡をもう一度だけ起こせるとしたら、何を起こしたいだろうか。
彼ならこう願うだろう。親友の体調が良好であることを。
実はこういうことだ。
彼にはかけがえのない友人がいる。いや、親友と言ったほうが正しいか。
その親友が今、重い病気に罹り入院していた。数ヶ月で退院はできたが、再入院の可能性がある状態だ。
今は自宅療養中だが、いつ悪化して再入院するのか分からない。だからだろう。彼が心配するのは。
数ヶ月で退院できたが、今度は何時まで入院するのか。親友とこのまま離ればなれになってしまうのか。
彼にはそんな恐怖が心の中で渦巻くようにこびり付いていた。
最近の親友の状態は、検査が増えている状態だった。健康そうに思えても、医者からは良くなさそうな感じなのだろう。
だからこそ、彼は願っていた。親友の体調が悪化しないことを。良好な状態をキープすることを。健康な状態へと早く回復することを。
それから数週間後のこと。親友の検査の日がやって来た。そして、長い時間がかかったが、結果が告げられた。
経過は良好であるということ。そして、順調に回復に向かっているとのことだ。
その報告は二人に安堵をもたらすものだった。肩の力が抜けすぎるほどに。
その後は医者からの注意事項が続き、話が終わった。
彼は思っていた。奇跡はもう一度起きたのだと。親友の体調が良好になったのは奇跡が起きたからだとーー。
夕暮れをぼぅーっと眺めながらたそがれる。沈み行く赤い夕日と広がり行く青い夜。その境界線をただひたすらに眺めている。
いつ頃から眺め初めたのか分からない。ただ、気が付いたら日々の習慣になっていた。
完全に太陽が沈むまで眺め続ける。飲食もせずに。空腹感はあるけれど、不思議と気にならない。
沈んでから帰路に着き始める。それが私の日課だ。我ながら変わっていると思う。
けれど、あの赤と青のグラデーションに気づき、それを眺めて、楽しんでいる。
私しかいないのならば、独り占めしていることになる。あの赤と青のグラデーションを。そんなことないだろうけども。
夕暮れの時間帯に空を見上げれば、曇り空じゃない限り、あの赤と青のグラデーションは見える。
それに気づくか気づかないかの違いでしかないのだからーー。
きっと明日も、変わらない日常が待っている。
非日常なんて起こりはしない。変化はつけることはできるだろうけど。
隕石が降ってきたり、病気がいきなり治ったりなんかしない。
誰かが不意にいなくなったとしても、この世界の日常は変わらない。
当たり前の日々を当然のように過ごしていくだけ。
働いて、ご飯を食べて、昼寝して、薬を飲んで、文章を書いて。時には、医者にかかって。
その繰り返しを続けている。そんな人生を送っている。
変わらない日常の日々。繰り返しのウィークルーティン。起こせる変化を楽しむしかない。
手持ちのカードは貧弱なれど、貧弱なりに楽しんでいけばいい。
ネガティブと捉えるか。ポジティブと捉えるか。それは自分次第なのだからーー。
その部屋は、一言で表すならば、真っ暗だろう。
明かりも何も点けずにいるからだ。陽の光も射し込まない。カーテンが閉められているから。
時間は深夜。午前を過ぎている。意識しなければ、時計の針の音も聞こえることは無い。
ただただ、静かに暗闇に覆われている。静寂に包まれてしまっているかのようにシンとしている。そんな部屋だ。
子供が見たら恐怖で怯えてしまうだろう。もしかしたら、有りもしないお化けを見るのかもしれない。子供特有の独特さゆえに。
本当はただの物置でしかないのだが。昼間に見るのとでは違ってくるのかもしれない。
だが、ここは本当にただの物置だろうか。その答えは誰も知らないーー。