NoName

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2/13/2024, 10:26:20 AM

相談があるんだけど
「あーごめん今週は予定が……来週誘ってみて!」
「今週行けんが〜? 来月でいい? テスト期間入った」
「ごめーーーん! まじで来週! 来週は絶対行くから!」
幾重にも保留されたあなたの約束は果たされることはなかった。
奴の無計画度合い? 否、あなたが死んだからだ。
友人に保留され続けた相談は意外と貴方の人生の中で大いなる影響を持つものだったらしい。
そんな重大なことを親友に無下にされ続ければ順当な結果だろう。
誰も悪くなかった。そう思っているのは貴方だけだが、そのような事実として貴方の中で存在する。
お前の死は順当だった。
しかし遣る瀬無いだろう、お前ではなく奴が。
でもね安心して。

来週、奴は来るよ。
【待ってて】2024/02/13

2/12/2024, 12:38:01 PM

なんか明日世界終わるらしいけど知ってる?
てかそんな中お前だけ生き残るらしいけどどう思う?
「お、どした〜?」
「なんも」
聞きたいのは、生き残る感想じゃなくて、見送る感想だ。
俺、死ぬんだけどどう思う?
【伝えたい】2024/02/12
あまりにしょーもな

2/11/2024, 1:24:53 PM

「十年後さ、またここで会おうよ」
「キザっぽキモすぎ」
「うぜー」
よくある再会の約束だった。離島で育った二人の少女は、その後順当に地元を離れ、十年がたった。

片方の少女は有給を使い、約束の少し前から準備を始めた。
準備というのは、そう、舟を借りたのだ。
急速な温暖化の影響でふるさとが海に沈んだから。
それでも行こうとするのは義理堅さなんかてはなく、単に彼女はかつて地元の空だった場所での再会という如何にもなイベントに胸を踊らせているだけだった。

当日、女は舟を漕いだ、櫂でひたすら。
島への道に浮きで道ができていた。かつての地元を私のように見に来る人間は少なくないのだろう。
やがて、島らしきものが海底に見えてきた。
そこに舟があった。
お互い、大概ばかだよなぁ。
約束した地が海に沈んだ、なんて反故にしても仕方ない再会にふたりは立っていた。

……ひさしぶりという言葉は口の中で飽和している。
『まじで来るか〜死ぬほど待ったわ』
船の中には白骨化した遺体と、置き手紙。
死ぬほど待ったやつが死んで待ってるなんて笑えなすぎるジョークだ。
最近連絡がつかなかったのはこういうことか。言ってくれればよかったのに。いや、知っていたのに目を逸らしていたのは私だった。持病で長くないって、昔から言われてた、そうだった。
しばらく黙って舟を寄せていた。鎖を外して陸に持ち帰ろうとも思ったが、まあ、まあ……。
女は手を伸ばす――。

二隻の舟が同時に転覆したのはその直後だった。水飛沫は空高く、女と女だったものは海底よりも深く沈んでいった。
時の流れに風化しない者が生き残る。座礁した船は大海に往かない。
じゃあ、この話はこれでシュウソウ……なんつって。
【この場所で】2024/02/11
舟葬/終奏

2/10/2024, 1:00:12 PM

この世界の私を起点とした半径3m外は残らず全て背景である。
人口密度に応じてその範囲は狭まり、背景の割合は増える。例えば、都会の雑踏は2㎜、田舎の農道は100m……。
何を言いたいかと言うと、すれ違う人間どもは皆、その背景として機能するその場限りの存在で、すべからく容姿などはランダムに生成されるということだ。
雑踏の声は実は彼らから発されたものでなく、全員が幻を聞いていて、会話の内容は不明瞭かつ漏れ聞こえた単語が意味のあるものとして処理されない、そんな形をしている。
肩をぶつけた足を踏まれたと思うのは実は肩や足がそれ単一の存在としてこの世界を跋扈しており、普段は透明な彼らが突如雑踏に現れることで、間近に居る肩や足の複合体である人間が犯人となる。
この雑踏のように不明瞭な話は単純明快な結論を持っている。

自分以外が背景であるこの世界は、ゆえに誰もが、一人である。
【誰もがみんな】2024/02/10
このぶんでなんとなくかたちがそうぞうできたひとはじぶんときがあいます

2/9/2024, 11:53:08 AM

私の友達はモテる。
昨日はラブレター。今日は花束らしい。
「さっき貴方を見かけて、一目惚れなんですけど……良ければ」
そう言って差し出された赤色の花束を、ソイツは私との遊びの約束に持ち込んだわけだ。
「ねえ砂糖どこ?」
誰もが振り向く美貌と
「水色のラベルもう中身なくない?」
琴を弾くような、少し籠もった繊細な声。
「横のスティック使ってよ」
「はいほーい」
赤い花束はゴミ箱に散っている。

「気持ちだけでも嬉しい」って言うじゃん?
物を受け取ったら相手は気持ちが受け取ってもらえたって思う。
私は物を受け取って気持ちを受け取ったことにする。
だからこれは器なの。気持ちじゃないから捨ててオッケー。

屁理屈を捏ねる彼女は、本当は気持ち悪くてしかたないだけだ。
自分へ向けられる愛とか薄っぺらなのが我慢ならないだけだ。
自分に好意を寄せる人に彼女は興味がない。
そんな彼女が私は大好きだけど、つとめて他の子とは違うみたいな顔をしてる。
突き放されたら地獄だ。でも、応えてもらっても、ね?
【花束】2024/02/09

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