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12/13/2023, 8:50:57 AM


一人でゆっくり寝る布団は気持ちいい。
だけれど、二人でぬくもりを感じる布団も気持ちいい。
そのあたたかさは、
心と心を実体化したようなものだ。

心は見えないようで
よく見るとそこら中に見える。


「心と心」

11/27/2023, 11:43:29 AM

他の家と比べると、自分の家には圧倒的に
愛が足りていないと感じていた。
はっきりと輪郭を持ったのは、
中2の深夜、彼氏とメールをしていて
つい夜ふかしをしていると、
母親の叫ぶ声と父親の罵声が聞こえた。
心配で2階の部屋からリビングに降りると
ぐちゃぐちゃになった部屋と
慌てて体裁をつくろう両親がいた。

父は不器用というか昭和的な頑固な人間で
ろくに話さないくせ、癇癪持ちだった。
何を考えているかわからなかったし、
母とうまくいっておらず、
私は母のことが好きだったので父を悪だと思っていた。


愛が足りていない自分がいる気がして怖い。

そんな自分が誰かを愛し、
家族を作れるのか不安になる。

周りを見渡すとみんな幸せそうにみえる。

本当にそうだろうか?
以外と、それぞれ抱える問題があり、
何かしらは欠けながらも
その日その日を過ごしているものではないか。

今更父を好きになろうとは思わないが、
嫌いになろうとも思わない。
父に限らず、周りの人間全てに対してそうだ。
わざわざ嫌な人を好きになる必要もない。
それも1種の愛情だ。

好きな人には好きなだけの愛を注げばいい。

愛はかたちがないから計れない。
自分の好きなようにしたらいい。


「愛情」

11/24/2023, 1:35:15 PM


もう12月目前。
紗凪がタンスの整理をしていると
1枚のセーターが出てきた。

なつかしい。

ターコイズブルーのセーターを見ると毎年思い出す。

初デートは期間限定の催しの美術展だった。
近くにおいしいパン屋さんがあるということで
2つずつ買って、イートインコーナーで
ぎこちない会話の中食べたっけ。

美術展は、絵の迫力にも勿論感動したが
彼が一つ一つの絵とじっくり向き合ってる姿にも
ひどく心を打たれた。

達也は、とても感受性が豊かで優しい人だ。
いざという時守ってくれる…より守られるような人。
だけど、しっかり芯をもっていて、
自分を確立している。その印象は多少変われど
今も変わらない。

そう言えば、彼も紺色の似たようなセーターを
着て来て、なんだか気まずくもこそばゆいような
感情になったんだっけ。

ドキドキ。

あの日の初々しさはもうないかもしれないけど、
彼を思う気持ちは変わらない。

ターコイズブルーのセーターをぎゅっと抱きしめた。


「セーター」

11/18/2023, 10:44:09 AM


シンプルなデザインのアルバムには、
たくさんの写真が並べられている。

食べ物や観光地、二人の楽しそうな顔等…
その日、その場の匂いや温度、会話が
タイムスリップしたかのように思い出される。

このアルバムは半年ぶりに開く。
正しくは、半年ぶりに開くことができた。


開いてしまったら、涙が溢れて、
自分が自分ではなくなってしまうと思い、
本棚の奥の奥に見えないように隠していた。


私は彼をとても大切に思っていたし
彼も私をとても大切に思ってくれていると感じていた。

違和感を感じたのは去年のクリスマス。
その日のデートは、
とても形式的で彼の気持ちがわからず、
必死でご機嫌取りをしたと記憶している。

アルバムの最後のページは、
クリスマスのイルミネーションの風景写真一枚。

彼は、LINEで一言。
「一緒に居て、疲れる。やりたいことができない。」

拍子抜けした。
私はわがままを言うタイプではなかったし、
彼との距離感は適度にとれていたと思う。

なにもわからぬまま、その後届いたのは
スタバのギフトカード2000円分。

2000円で別れられる女なのか。この1年は、
一体何だったのかと
私は、全てが嫌になり、彼を本棚の奥の奥に封印した。


改めてアルバムの想い出を見ていると
その時の感情が蘇る。
ただ、涙は溢れないし、
むしろ自分の顔を見て、なんて可愛くない顔を
しているんだろうと笑えてしまう。
確かに彼の様子伺いを多くしていて、
自分のことを愛してあげられていなかったかもしれない。

彼との生活が楽しくなかったわけではない、
むしろその時は自分にとっての最良だったはずだ。

__果たして最良だったのか?
それは、誰にもわからないし、すべての経験に
意味はあると思うが、少なからず
あの時、わたしはわたしを好きになれなかった。


どうやら、たくさんの想い出に手を振って
新しい一歩に踏み出す時が来たようだ。

外は生憎の雨だ。
この雨のように涙を流せばよいのに。
と、過去の自分に声をかけた。


「たくさんの想い出」

11/17/2023, 1:05:47 PM


2階から外に出る。
朝は普段より1時間前に起きて雪かきをする。
歩道と車道には高い塔ができる。
ただただ白い世界。
息ができないほどの寒さ。

田舎の雰囲気、人、空気、習わし。
なにもかもが嫌で飛び出した18才。


大学1年、渋谷に新宿、池袋…
何処を歩いてもキラキラと輝いていて、
ときめき、
魔法にかかったようだった。


絶対に田舎には戻らない。
私の居場所は「東京」にしかない。


田舎を離れて、10年。
渋谷のキラキラはもうときめかなくなってしまった。
大きなデパートやお洒落なカフェ。
当たり前になりつつ世界。

流行の移り変わりも横目で流し、
簡単に日常でワクワクすることは殆ない。

冬の実家は一番嫌いだった。
ただでさえ何も無いのに
雪で街を覆って一面の白。


今となっては、雪で覆われた街を見に行きたいと思う。
田舎があるというのも悪くない。

見渡す限りの銀世界。
しーーんと静まり返った真冬の空。
何もせずに、ぼぉーっとできるのがよい。
何もなくていいじゃないか。
18の頃に見ていた、キラキラした世界に負けない
美しくさが目に前に広がっていた。



「冬になると」

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