『秋色』
君の誕生日を聞いたとき、すぐに納得した。
君の素敵な笑顔がまるで、温かい、秋の色のようだったから。
誕生日って、特別なものだ。
なぜか、その季節に性格が似通う気がする。
夏だったら、快活だとか、冬だったら、お淑やかだとか、
偏見でしかないんどけど。
君の笑顔は、まるで秋色だよ。
お題に無理やり合わせた感が強い作品となってしまいましたね……by作者
『もしも世界が終わるなら』
大切な人に、「ありがとう」と、伝えさせて
『靴紐』
「あ、靴紐解けてる……」
君の隣で歩いていた時のこと。いつの間にか自分の靴の紐が解けていた。
今日は一緒にたくさん歩く予定でいたから運動靴で来た。そのため当たり前のように靴には紐が通っている。
このままではいつか転んでしまうな……。
「ごめん、ちょっと靴紐結んでいい……」
「俺結んであげようか?」
急に飛んできた言葉。まさかそんな言葉が来ると思わなくてびっくりしているうちに、自分の足元に君がしゃがみ込んでいた。
「……ん、できた」
君がその場を離れて自分の足元を見てみるとおかしな結び方になった靴紐が現れた。
「……?なんか違くない……?」
明らかに蝶々の形ではない紐がそこにある。
「……あんま、紐結ぶの得意じゃないんだよね……」
得意じゃないのか。じゃあなんで「結んであげようか」なんて言ってきたんだ。
まぁでも、
「結んでくれて、ありがとう……」
「お前には転んで痛い思いしてほしくないからさ」
やはり自分の隣にいてくれるこの人は優しい人だ。
だけど、せめて靴紐は結べるようになってね。
『答えは、まだ』
今日、好きな人に告白した。
相手は、僕のことを知らないと思っていた。
だって自分は、所謂「隠キャ」と呼ばれる人間だからだ。
これに関しては自他ともに認めることだった。
でも、君は僕のことを知ってくれていた。
「隣のクラスの……、去年クラスおんなじだったよね?」
「え…、知ってるの……?」
「話したことあったから。ほら、グループワークのとき。ずっと同じ班だったじゃん」
まさか、覚えていてくれてるとは思わなくて、胸がぎゅうっとする。
そもそも、この告白は自分の気持ちにけりをつけるものだったから、こんなに会話が進むとは思っていなかった。
どうせ、「ごめんなさい」で終わりだろうと思ってた。
だけど、君はこんなに知っててくれてたんだ……。
「うーん、告白なんだけど……」
あ、来た。今しがた想像してた結果が来るときだ。
高く高くレンガを積み上げて、心の壁を厚くして、飛んでくる言葉に覚悟をした。
「君のこと、私まだ全然知らないと思うからさ……、」
その通りだ。自分が一方的に知ってるだけ。
「だから、」
「答えは、まだ。——先送りにさせて」
書いてて自分が恥ずかしくなってしまった
よくある設定のお話です
『センチメンタル・ジャーニー』
(感傷的な旅、失恋の傷を癒す旅、という意味らしいです)
とりあえず、旅に出た。
なんも考えられなくて、最低限の生活物質を持って電車に揺られた。
とにかくどこか遠くに行きたかった。遠くに居たかった。
あの人が居ないところへ。
川が綺麗なところに行った。
山並みが美しいところに行った。
鳥のさえずりが聞こえる道を歩いた。
その土地の美味しいものを食べた。
何もかも忘れることが許された。
社会で生きる事も、あの人の隣にいられる未来を想ったことも、
全部、ぜんぶ、
何もかも入れ替えられたような、
感情丸ごと掻き消せるような、
そんな旅だったと、今は電車に揺られている。