『君と見上げる月…🌙』
手が悴んで、自分の手を温めるという行為も億劫になってしまった。
足は地面にぴったりとくっついて離れない。
見晴らしのいい丘の上まで連れてきてくれたのは嬉しいのだけど、やっぱり寒さが今は勝つ。
「冬は空気が澄んでるから、星が綺麗に見える」
こっちに来てから君に教えてもらった。
都会生まれの私はあまり星空を見てこなかったから。
目の前には、無数の星々が散らばっている。
小さな星も自分の主張を忘れずに、ちゃんと輝いて、空が燦々としている。
中でも一番の輝きを放っていたのはやはり月だった。
都会でも月はもちろん見たことはある。
でも、今、すぐそこにいるこの星は、初めて見るような気がした。
空気が澄んでいるからなのか、
その吸い込む空気が綺麗で凍てついているからなのか、周りがやけに静かだからなのか、
「さむい……」
寒さに耐えきれなくて、上を見上げたまま、少し縮こまる。
「さぶい?」
そう問いかけ、君は私の手を絡めて繋いでくれた。
冬想定のお話です。
「さぶい」は「寒い」の方言です。
『空白』
大切な記憶を、私は忘れてしまったらしい。
目が覚めたら、やけに天井が白くて、入る光が眩しかったんだ。
隣には、君が居たんだ。
なんで、君が泣いているのか、わからなくて、
「大丈夫ですか」って聞いたら、
君は、すっと涙を引っ込めてしまった。
それから、君の涙を見てないね。
君は、私の恋人なんだね。
ごめんね、何も覚えていなくて。
忘れてほしくないよね。
大切な人が、自分のことを覚えていなかったら、
苦しいよね。
なんにも、覚えてなくてごめんね。
全部消去してしまったみたいな。
空白ができてしまった私に、
君は、
また思い出をくれて、埋めてくれるんだね。
ありがとう
そう言ったら、君は「急になに笑?」
って言ってくれた。
今の、君がくれた記憶も嬉しいんだ。
だけど、
この、思い出せない記憶も
思い出したら、
君はまた涙を流してくれるかな……?
よくある記憶喪失パロ的なものです。
甘い、甘い、甘い…
好きな人匂い、温もり、舌の味…。
あー、こんなに甘いんだ。
恋って、こんなに甘いんだ。
ずっとずっと、この甘さが続けばいいのに…
そんな時間がもうないなんて、嫌だな。
貴方が居ないのが悲しい。
貴方に会いたい。
貴方に触れたい。
貴方との思い出は、私にとって甘い思い出。
また、会える日を、楽しみにしていますね。