冬科

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『君と見上げる月…🌙』


手が悴んで、自分の手を温めるという行為も億劫になってしまった。

足は地面にぴったりとくっついて離れない。

見晴らしのいい丘の上まで連れてきてくれたのは嬉しいのだけど、やっぱり寒さが今は勝つ。


「冬は空気が澄んでるから、星が綺麗に見える」


こっちに来てから君に教えてもらった。

都会生まれの私はあまり星空を見てこなかったから。


目の前には、無数の星々が散らばっている。

小さな星も自分の主張を忘れずに、ちゃんと輝いて、空が燦々としている。

中でも一番の輝きを放っていたのはやはり月だった。

都会でも月はもちろん見たことはある。

でも、今、すぐそこにいるこの星は、初めて見るような気がした。

空気が澄んでいるからなのか、
その吸い込む空気が綺麗で凍てついているからなのか、周りがやけに静かだからなのか、



「さむい……」

寒さに耐えきれなくて、上を見上げたまま、少し縮こまる。

「さぶい?」

そう問いかけ、君は私の手を絡めて繋いでくれた。







冬想定のお話です。
「さぶい」は「寒い」の方言です。

9/14/2025, 11:27:19 AM