火の粉が舞い上がる。
先の見えない夜闇の中で、彼女が持つ火灯りだけが頼りだ。
『夜を凌ぐ篝火』
一筋の光
「出来たよ」
その一言に目を開け、鏡を見る。そこには自分とは思えない顔が映っていた。粧って化ける、故に。
「魔法使い」は「魔女」生まれ変わる。強さを示すため、弱さを隠すため、あるいは決意の表れ。
行く先は険しいものだ。それでも、茨の道を突き進み、真の強さを掴み取らねば。
『決別』
鏡の中の自分
「じゃあ、おばあちゃんは虹の向こうにいるんだね!」
ぴょんぴょんと跳ねて、虹に手を振る。娘に「ママも」と誘われたら、断れなかった。
夫が息子たちを連れて戻ってきたけど、タイミングが良くて思わず笑ってしまった。
「おばーちゃん!またねー!」
元気だな、なんて思っていたその時だった。
『アイリスの呼び声』
永遠に
空母の甲板に男は立っていた。
先ほど離陸したばかりの機体は、水平線の向こう側に消えていく。
武力のない世界はきっと素晴らしいものだろう。だが、それはただの理想に過ぎない──彼女はいつもそう語っていた。
いつか死ぬ、だが今はその時ではない。
祖国の空を飛び立つ彼女に、男は敬礼で見送った。
『遠き青の果てより』
どこまでも続く青い空
「エノ、今日は買い出しでいいか?武器の修理もしておきたい」
「わかった。足りないものは……インクとポーション、後は行ってから考える」
俺とエノはパーティの買い出し担当、あるいは追い出され組。俺が所属するパーティは男女二人ずつの平均的な編成。前衛は盾役の俺とリーダーのアント、後衛が魔法使いのエノと回復役のカーラという割り振りとなっている。堅実な役割分担ではあるし、今まで何事もなく過ごしてきた。しかし、ある程度クラスが上がってきたところで問題は起きた。アントとカーラはその関係性を隠さなくなり、宿での部屋割りを無視して過ごし始めた。他の客にも迷惑が掛かるからやめろと伝えたが、エノが追い出されることになり、今に至る。
彼女には申し訳ないことをしてしまった。
『夜半に繰り出すは』
始まりはいつも
騎士と魔女シリーズ(wip)