誰にも知られたくない。
誰にも内緒。
だから私は暗闇に箱を隠すの。
私だけしか中身を知らない。
誰かの前で箱を開けるなんて、そんなこと絶対にしない。
もし誰かに知られたらその時点で私だけの秘密の箱でなくなるもの。
人間はだいたい好奇心旺盛で知識欲があるから、あの手この手で箱の中身を知ろうとする。
だけどあれは私だけのもの。誰にも知られるわけにはいかないの。
私の思うままに、私の好きなようにしたい。
誰にも秘密で。
じゃないとあの人と私が離れ離れになっちゃうから。
「君、無人島に行くならば何を持っていくかね?」
二人だけの文芸部。そこで先輩がクロスワードパズルとにらめっこしながらそう訊いてきた。
私は次のコンクールに出す小説のプロットを考えているというのに、自由な先輩だ。
……まあ、今に始まったことじゃないけど。
「無人島なんかに行きたくはないですけど……
どうしても何かを持っていくと言うのなら水と食べ物ですね」
「うむ、なるほど。君はそういう考えなのだな。
かくいう私も無人島には進んで行きたくはない。だが何か持っていくとなれば虫よけスプレーを持って行こうと考えているな」
「はあ。なぜですか?」
先輩はよくぞ訊いてくれた! とばかりに目をキラッと輝かせにんまりと笑う。
あ、スイッチ踏んじゃったと思った時にはもう遅い。
「無人島と言うからにはそれなりの理由があって人が住めない、住んでいたがいずこかへ去ったのだろう。
どちらにせよ人の手が入っていない完全な野生環境には相違ないのだ。
そこに人が入ってきたら格好のエサになる。よほどの強者でない限り人は脆弱だからな。
危険な獣だとかは視認できるから状況によっては避けることもできる。
だが虫、とりわけ蚊などはどうだ? いつの間にか刺されていた……なんて経験したことあるだろう?
蚊はマラリアなどを運び、人を死に至らしめることのできる存在だ。人を除けば人を殺す生き物第一位なのだからな。
だから私は虫よけスプレーを持って常に蚊に刺されないよう……聞いているかね?」
「聞いてますよ」
「うむ、それは良かった!
どこまで話したっけ……ああ、そうだ。
蚊に刺されないよう肌という肌に塗り込んで……」
そしてまた先輩は水を得た魚のように饒舌に語り始める。
今日はもうプロット考えるの無理だな。
私はそう諦めて先輩の話に相槌を打つ係になった。
秋風が吹く。それを受けて枯れ葉がひらひらと風に遊ばれつつ落ちていく。
秋風🍂を文章にするとこんな感じだろうか。
それはさておき今日はとても寒かった。
でももうすっかり秋だなあ。でもこれからどんどん寒くなっていくんだなあ。
……寒がりには辛い季節がやってくるのかあ……
いや、冬は冬で食べ物が美味しいから好きだけども!
今日、こんなことがあった。
ドアの目の前でクリアファイルを落とし、運の悪いことに中の書類がぶちまけられてしまった。
あわわ……と拾っている最中、ふと(このドア開いたら私ぶつかっちゃうなぁ)と思ってドアが当たらない位置に移動した十数秒後、勢いよくドアが開けられ出てきた人と目が合って驚かれてしまったのだ。
あれは何かしらの予感が働いたのだろうか。それともただの危機管理能力だろうか。
まあどっちでも構わないが。
§
(日付を跨いでしまいましたが)今日でこのアプリを始めて一年になりました。
拙作を読んでくださった皆さま、拙作を評価してくださった皆さまに心よりお礼を申し上げます。
これからも頑張ってまいりますので、温かく見守ってやってください。
大好きな二人の友だち。
一緒にいるだけでとても楽しくなるし、いろんなことを相談できる。
高校を卒業して、大学生、社会人になっても友情は永遠に不滅だよと話していたけれど、今日で三人の友情が終わりになっちゃうね。
けたたましい車のクラクション、衝撃、誰かの悲鳴、二人が私を呼ぶ声、騒がしくなる周囲、遠くで聞こえる救急車のサイレン。
……体中が痛い。さっきまで体が熱かった気がするのに今は寒くてたまらない。
起きていたいのに意識が薄れていく。二人の顔ももうよく見えないや……
ああ……二人の泣いてる声も遠くなっていく……
旅行中だったのに、こんなことになってごめんね。
二人のこと、大大大好きだったよ。ちゃんと言葉で伝えられなくてごめんね。
私のことは早めに忘れて幸せになってね。
さよなら、Best friends.
またいつかどこかで会おうね……