帰宅途中に空を見上げると、絵に描いたような見事な三日月が浮かんでいた。
これは早く帰って知らせねば、と僕は歩みを早くする。
家に帰ると愛しい愛しい僕の君……黒猫のムーンちゃんが出迎えてくれた。
「ただいまムーンちゃん! ねえねえ聞いてよ、今日は三日月がすっごくキレイなんだよ!
あっもちろんムーンちゃんの方が麗しいしとってもキレイなんだけどね!」
それを聞いたムーンちゃんはあくびをしてからゆっくりと居間へと歩く。
そしてムーンちゃん専用となっている出窓へ飛び乗りじっと月を見上げていた。
「キレイでしょー? 三日月ってなんでこんなに心惹かれるんだろうね?
もちろん僕はムーンちゃんにメロメロなんだけどね!」
ムーンちゃんはニャアと一鳴きしてそっぽを向く。
ちょっとつれないところもあるけど、それもまたムーンちゃんの魅力。
「我が愛しの君と見上げる月…🌙←あんな形の舟に乗って星の海を航海してみたいな、なんてね!」
三日月を指差しながら言うとムーンちゃんはまるでチベットスナギツネのような目をして出窓からさっさと降りていった。
ちょっと言葉チョイスがロマンチストすぎたかな?
でもいつかムーンちゃんと一緒に星の海……宇宙に行きたいのは本当だからなあ……
もっと直球で言ってみようか! よしそうしよう!
「ムーンちゃ〜〜ん!」
そしたらなぜか引っ掻かれました。うーん……なんでだろう……?
はっ、まさかツンデレ!?
ムーンちゃんってば……! も〜〜〜好きっ!!
空白を埋めるように文字を書く。
だけどぎっちり書いてしまえば読みづらいことこの上ない。だけどスカスカでもそれはそれで読みづらい。
ちょうどいい塩梅を見極めなければならない。
読みやすさは人によって違う。
例えば こういう風に 文節をある程度 区切りながら 書くと 読みやすい と言う人も 読みにくい という人も いるだろう。
ドラ◯エとかのRPGや映画などの字幕はそういう風に文を作っている気がする。
やはり空白は偉大なのだろうか。
二次創作でも空白を埋めるように想像することが多いはずだから……やはり空白は偉大なのだろう。
では私も空白で文を作るか。きっと良い文が作れるはずだ。
『□□□□□ □□□□□□□ □□□□□』
……うむ。見えなかったら意味ないな!
「聞いてよ! 今日、こんなことがあったの!
隣の男子がさ ―― 」
「えー? マジ? 逆にすごいね!
あそういえばこの前、たぶん同じ男子だと思うんだけど――」
帰宅ラッシュで混み合う電車の中でマシンガントークをする女子高生たちの会話に聞き耳を立てたり立てなかったりしつつ、俺はスマホで調べ物をしていた。
しかしキャッキャキャッキャと楽しげな声についつい手が止まる。あと話の中に出てくる男子が中々無茶しててちょっとハラハラしてしまう。
クラスメイトの玉子焼を食べ比べしたり、廊下を歩く時は逆立ちだったり……とてもその、愉快だとは思う。
すげーなその男子……と思っていると電車が駅に着き、女子高生たちが降りていった。
台風が過ぎ去っていったかのように静かになった車内で、ふとこんな会話が聞こえてきた。
「……あのさ、さっきの女子高生が言ってた男子って、もしかしたらうちの弟かも……」
「……マジで?」
声の主はどこにいるのかわからなかったが、なんというか……世間は狭いなと思った瞬間だった。
すやすやと眠る君。
そんな君の頭をそっと撫でると、君はくすぐったそうに身をよじる。
それでも君は起きることはない。君の眠りを妨げるものはここにはいないのだから。
静かすぎるこの場所で僕はずっと君に子守唄を歌おう。
いつかひとりきりで目覚めてしまう君。
せめて目覚めた時に美しい景色と君のための歌が君を祝福してくれるように祈りを込めて歌うよ。
そして僕は全ての感情から繭のように君を守ろう。
僕が朽ちても僕の一番大切な人は君なのだから。
§
元ネタは『アクアテラリウム』という楽曲です。
『凪◯あすから』の1クール目のEDでもあります。
とても透明感のある歌なので良かったらぜひ聴いてみてください。
Red,Green,Blue……光の三原色の並び順であると共にポケ◯ンの発売順の並びでもある。
まあさすがに英語で書かれていたら光の三原色の方をすぐ思いつくだろうけど。
それはさておき、この三色の光があれば黒以外の全ての色が光で表現できるらしい。
私としては「ほんとかなあ……」という思いがあるのだが、まあ、そうなるのであろう。
……こういう疑問が生じた時、なんでもかんでも鵜呑みにするのではなくて実験してみるのが賢い選択だと思うのだが、いかんせんめんどくさい。
そういう実験キットとかありそうだが……おそらく高いだろう。
知識欲を満たすためだけに買うのもなぁ……とも思う。
まあただどうにか理由をつけて買うのを拒否しているだけかもしれないが。