「聞いてよ! 今日、こんなことがあったの!
隣の男子がさ ―― 」
「えー? マジ? 逆にすごいね!
あそういえばこの前、たぶん同じ男子だと思うんだけど――」
帰宅ラッシュで混み合う電車の中でマシンガントークをする女子高生たちの会話に聞き耳を立てたり立てなかったりしつつ、俺はスマホで調べ物をしていた。
しかしキャッキャキャッキャと楽しげな声についつい手が止まる。あと話の中に出てくる男子が中々無茶しててちょっとハラハラしてしまう。
クラスメイトの玉子焼を食べ比べしたり、廊下を歩く時は逆立ちだったり……とてもその、愉快だとは思う。
すげーなその男子……と思っていると電車が駅に着き、女子高生たちが降りていった。
台風が過ぎ去っていったかのように静かになった車内で、ふとこんな会話が聞こえてきた。
「……あのさ、さっきの女子高生が言ってた男子って、もしかしたらうちの弟かも……」
「……マジで?」
声の主はどこにいるのかわからなかったが、なんというか……世間は狭いなと思った瞬間だった。
9/12/2025, 1:01:14 PM