雨にはしゃぐ君たち。
キラキラと目を輝かせ、のびのびと喜びを表現している。
いつもは動きの遅い君たちも、ここぞとばかりにうねうね動いている。
あ、一匹虫かごから逃げ出した。
……うん、やはり雨と君たちカタツムリの親和性ってものすごく高いんだね。
屋根の下とはいえこうして雨の中虫かごを開けてるだけでみんなうぞうぞうねうね動いているんだもの。
雨と言えばカエルもだけど……動いてる虫しか食べないからなあ、あの子……
ボクがどうにかして虫を克服したら絶対に飼うから、その時は先輩として雨好き友達として色々教えてやってくれよ?
部活が終わってすぐ後、教室に忘れ物をしていたことを思い出した。
友達はもう暗いし明日にすればと言ったが、思い出してしまった以上取りに行かねばという謎の使命感に囚われた私は職員室で鍵を貰い、そのまま教室のドアを開ける。
真っ暗で誰もいない教室。そんな非日常に少しワクワクしている自分がいた。
私の席は廊下側の一番前なので迷わずに忘れ物を取ることが出来た。
さあ鍵を閉めるぞと鍵穴に突っ込んで捻るも手応えがまるでない。
何回か繰り返して、もしかしてもう鍵かかってる? と不安になってドアを開けるとすんなり開いた。
ウソでしょ!? と思いながらもう一度鍵を捻るもやはり手応えはない。
……ヤバい。ヤバいヤバいヤバい!
どうして鍵がかからないの!?
と半泣きになりながらガチャガチャしていると、私の戻りが遅いことを心配した友達たちがやってきた。
私は嬉しいやら申し訳ないやら悔しいやらで涙が溢れ友達たちを驚かせてしまった。
私はなんとか事情を説明し、友達の一人が鍵を捻る。
するとカチャンと鍵のかかる音があっさりと響いた。
え? と面食らう私と友達たち……
私の日頃の行いが良かったのか、それとも泣いていたからか嘘つき呼ばわりされることはなかった。
でもその日以来鍵をかけることに苦手意識を抱いたし友達も私に部室の鍵を託すなんてこともしなかった。
あの日、ただ単純に私のやり方が下手くそだったのか焦りで上手く出来なかっただけなのかは定かではない。
ただ今になって、もしかしたらオバケのいたずらだったかもしれない……とふと思ってしまった。
なぜなら学校の隣に墓地があり、教室の窓から見えてしまっていたからだ。
まあオバケとかのせいではなくて、本当に私の鍵かけ技術が下手だっただけなんだろうけど。
・(トン)と―(ツー)で表されるモールス信号。
有名なものだとトントントン/ツーツーツー/トントントンのSOSだろうか。
創作や日常生活に使えないかとざっと一覧表を見てみたが、なかなか覚えるのは大変そうだ。
だがしかし覚えたところでそもそもモールス信号を知っている人なんてそうそういない気もする。
SOSは知っている人はかなり多いと思うが、きっとそれだけだろう。
トリビア的知識として覚えておくのも一興か?
次いつ活かせるのか全くもって不明だが……
どうしても母に言えなかった。
だけど言えば良かったという後悔が胸を締め付ける。
見間違いだと思っていた。必死にそんなことないと信じ込もうとしていた。
だけど思い返せば思い返すほどやっぱりそうなんじゃないかと思うようになった。
帰ってきたら母に何と言おう。それとも気づきませんでしたとシラを切ろうかな?
それとも堂々としてたから服が前後ろ反対だと私も後で気づいたと言おうかな?
まあどうしたって言い出せなかった「事実」は消えないから何を言っても怒られるんだろうけど……
ああ……憂鬱だなあ。
秘密だと思えば思うほど誰かに言いたくなる。
秘密だと言えば言うほど誰かに認めてほしくなる。
だけど、本当に我慢しなきゃ。
誰かに知られてしまったらきっと怖い目にあってしまうもの。
そうなれば彼は帰るべき場所に帰らなければならない。そしてもう二度と会えなくなってしまう。
それだけはイヤ。彼と私はやっとこうして一緒に暮らすことができたんだもの。
私のエゴでこの幸せをふいにするなんて、そんな愚かなことしないわ。
いろんな枷に雁字搦めだった彼。私と会うのにも人目を忍ばなくちゃいけなかった。だけどもうそんな心配しなくていい。
元から色白で細かったけど今はもっと白く、もっとスリムになった。スマートになった彼もカッコいいわ。
でも不満なのが彼の声が聞けないことと私の手料理を食べてくれないこと。まあそれはしょうがないけどね。
でもずっとずっと一緒よ。誰にも渡さない。
私のあなた。永遠に愛してるわ。
絶対に誰にも話さない。悟らせない。私のsecret loveを貫き通してみせるから、見ていてね。