バスクララ

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8/30/2025, 3:29:57 PM

僕たちは双子。だけど僕たちが生まれるずっとずっと前はひとりだった。
ひとりでいろんな所に行って、いろんな人と出会って知らないものを見聞きするのは楽しかったけど、やっぱりどこか寂しかった。
故郷はもうないし、親兄弟や幼なじみもいなくなったという事実がずっと心の中にあったんだと思う。
友達とか仲間とかにも出会えたけど、それでも寂しさは埋まらなくて、どうしようもない孤独感に苛まれていた。
だからついに寂しさに耐えきれなくなって、湖に身を投げた。
次生まれ変われるのなら、ひとりじゃなくてふたりがいい。そう願った。
それを神さまが聞き届けてくれたのかどうかわからないけど、今世では双子になった。
兄は前世のことなんか覚えてない。いつも自信満々に笑って僕のことをグイグイ引っ張っていく。
まるで全てを失う前の自分を見てるみたいでちょっと眩しくなる。
僕がそうしていると兄はいつもニカッと笑ってこう言う。
『そんなしょげた顔するな! オレとお前は文字通り一心同体だ! 生きる時も死ぬ時も同じ、どこに行くのだって同じ。
こんな双子、なかなか滅多にいないだろう?
オレたちは特別だからな!
誰に何を言われたっていいさ。ずっと二人のオレたちが羨ましいだけに決まってるからな!』
そして僕の背中をバンバン叩くのもお約束。その度に僕は痛いと言いつつも、内心はとても嬉しかった。
兄はずっといつまでも僕を受け入れて、僕の味方でいてくれる。
人とは違う僕たち。ふたりになりきれなかった僕たち。
そう、僕たちは結合双生児。
僕と兄の腰の辺りから僕の右足と兄の左足までがくっついた状態で生まれた双子。
だからこそ今世は寂しくなんか、ない。

8/29/2025, 3:13:11 PM

田んぼのあぜ道、鬱蒼とした森、何かが祀られている祠。
輝く月、煌めく星、木に覆われた山、目には見えないけど暗闇の中で確かに存在している何か。
朽ちた建物、侵食する植物、かつて文明があった場所、こちらを見ている視線。
……心の中の風景はまるでアニメやゲームの一枚絵のように鮮やかだ。
ただ、そこに生き物らしい生き物はいない。
でも何かはいる。何かはわからないけど、確かにいる。
だけどおそらく怖いものではない。まっくろく◯すけみたいなものだろうから。
もしかしたら違うかもしれないけど、私はそう思ってる。

8/28/2025, 1:57:51 PM

青々と風に吹かれて揺れている一面の草原。
そこで麦わら帽子を被った少女が木の枝片手にてくてくと歩いていた。
だが急にひときわ強い風に吹かれて麦わら帽子が飛んでいく。
ポカンと口を開けた少女がふと弾けたように帽子を追いかける。
だけど風に乗った帽子はぐんぐんと空高く飛び、どこかへ消えてしまった。
少女は手を伸ばし悔しそうな顔をして草原へふて寝する。
夏草の香りに包まれ、いつしか少女は眠ってしまった。
少女の見る夢はどんなものだろう。
過去の夢か、現在の夢か、未来の夢か。
私には知る由もない。ただ、少女の顔は幸せそうだ。
ここで何があったかなど何も知らない無垢な顔。
今はまだ、それでいいのだろう。

8/27/2025, 1:07:55 PM

うぅ……私のスマホどこいったんだろう……
さっきまでそこにあったのに。スマホがないと出かけられないよお……
どこに置いたんだろ……タイムマシンがあったら数分前に戻って自分に知らせるのに……
というか、こんだけ探しても見つからないなんて……
まさか、ソファの下に潜り込んでるとか!?
……ほぼ真っ暗で何も見えない。
仕方ない、スマホの灯りで……って、え?
……ここにあるじゃん……手に持ってるじゃん……
なんで今まで気づかなかったんだろう?
メガネをかけてるのにメガネを探す人の気持ちが意図せずちょっとわかってしまったぞ……
はあ……まあいいや。来月友達に会った時の話のタネにしようっと。
それがあるあるだったとしても、あるあるなりに少しは盛り上がるでしょ。

8/26/2025, 2:29:15 PM

実は私には一度やってみたかった夢がある。
まず大きなタライを用意して、そこに水をなみなみと注ぐ。
次にトマト、きゅうり、おナスにスイカ、ついでにピーマンも投入。もちろん生のまま。
そこによく冷やすための氷も入れちゃえ〜。
よし、これで冷やし夏野菜タライの完成!
タライのすぐ側に折りたたみイスを設置して、そこに腰掛けつつ足をちゃぷんとつけると……
うぅ〜〜っ! 冷たくて気持ち〜〜〜っ!!
昔、テレビかアニメか何かでそれをやってるのを見てやりたい! って思ったことがあったんだよね〜。
こういうのって大人になっても楽しいもんなんだね。友達にオススメしちゃおーっと。
水を足でじゃぶじゃぶバチャンバチャンするの冷たくて楽しいってすぐわかってもらえるはずだもの。
あー、次の夏は波打ち際に素足のままで誰かとキャッキャうふふできたらいいなあ。
絶対楽しいよ。だってこれでもすごく楽しいもの!
……あら、水がぬるくなってきた。さすがにこの灼熱炎天下じゃ厳しいものがあるねえ。
もっともっと楽しみたいけど、このままここにいたらお空の住人になっちゃう。
意味は違うかもしれないけど、ひと夏の儚い夢を体験できたから良しとしましょうか。

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