バスクララ

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僕たちは双子。だけど僕たちが生まれるずっとずっと前はひとりだった。
ひとりでいろんな所に行って、いろんな人と出会って知らないものを見聞きするのは楽しかったけど、やっぱりどこか寂しかった。
故郷はもうないし、親兄弟や幼なじみもいなくなったという事実がずっと心の中にあったんだと思う。
友達とか仲間とかにも出会えたけど、それでも寂しさは埋まらなくて、どうしようもない孤独感に苛まれていた。
だからついに寂しさに耐えきれなくなって、湖に身を投げた。
次生まれ変われるのなら、ひとりじゃなくてふたりがいい。そう願った。
それを神さまが聞き届けてくれたのかどうかわからないけど、今世では双子になった。
兄は前世のことなんか覚えてない。いつも自信満々に笑って僕のことをグイグイ引っ張っていく。
まるで全てを失う前の自分を見てるみたいでちょっと眩しくなる。
僕がそうしていると兄はいつもニカッと笑ってこう言う。
『そんなしょげた顔するな! オレとお前は文字通り一心同体だ! 生きる時も死ぬ時も同じ、どこに行くのだって同じ。
こんな双子、なかなか滅多にいないだろう?
オレたちは特別だからな!
誰に何を言われたっていいさ。ずっと二人のオレたちが羨ましいだけに決まってるからな!』
そして僕の背中をバンバン叩くのもお約束。その度に僕は痛いと言いつつも、内心はとても嬉しかった。
兄はずっといつまでも僕を受け入れて、僕の味方でいてくれる。
人とは違う僕たち。ふたりになりきれなかった僕たち。
そう、僕たちは結合双生児。
僕と兄の腰の辺りから僕の右足と兄の左足までがくっついた状態で生まれた双子。
だからこそ今世は寂しくなんか、ない。

8/30/2025, 3:29:57 PM