あの人は何かを隠している。
そうじゃなかったら「私のこと、好き?」という質問に対して「たぶん……」なんて、そんな言葉にならないもの。
だからどーしても納得できなかったからあの人のことを問い詰めたの。
「私のこと、本当に愛してるの? 愛してるんだったらどうして曖昧なこと言うの?」
そうしたら彼は頰を掻いてしどろもどろになりながらも、ちょっと照れくさそうに答えた。
「あの……その、君があんまりにも綺麗で、その……僕なんかが君とお付き合いできるなんて、奇跡、だと思ってるから……
き、君のことはもちろんす…好き、だよ。
だ、だけど、誰かから言われたら……その、自信がなくなる……というか、えっと……」
もごもごと言葉を探す彼に私はとても愛おしくなってギュッと抱きしめる。
いきなりのことに彼はふぇっ!? と高い声を出してガチガチに身を固くしていた。
「私、やっぱりあなたのこと大好きだわ!」
「え……え? なんっ…え? え?」
「ふふっ、私は飾らない人が大好きなの。だからいつまでも自然体なあなたでいてね」
「え、あ……はい」
彼に微笑みかけると彼は優しい笑みを浮かべる。
そうだ、この人に言葉で愛情を示せと無理に言ってもダメ。
こうしてちゃんと言葉以外でも私が大好きだと大切だと示してくれてるじゃない。
私もそれに負けないくらい彼に愛を伝えなきゃね!
§
(平熱になりましたー。
元気なことは素晴らしい!)
ジリジリジリと太陽光がアスファルトを照りつけ、ミーンミーンとすぐそこの木でセミが鳴いている。
こんな暑い中、セミも婚活で大変だなあと思いながら私はペロペロとアイスクリームを舐めつつ炎天下を歩く。
こんなに暑いんだ、買い食いしたって許されると思って買ったのだが、まあ溶ける速度の早いこと早いこと。
手から伝ってこぼれたアイスクリームは地面に点々を作って、儚く消えてしまう。アリが舐める時間もないくらいに。
帰ったら手を洗わなきゃなーと、手についたアイスクリームを舐めつつ帰路に着く。
お昼ごはんを食べたら……何をしようかな?
これは、これからあるかもしれないし、ないかもしれない真夏の記憶。
§
(熱は微熱程度まで下がりました!
ご飯や固形物を普通に食べられるくらいには元気です!)
(高熱が出てしまい、お題のことを考えられる状態ではないので今日はお休みします。
……なんでこんな時になっちゃうかなー……)
【こぼれたアイスクリーム】
受験のために部活を辞めた人がいた。
卒業式の日、その人のために後輩たちが色紙を書いて渡していた。
引退の日までいた私たちと比べたら飾り気のないものであったが、後輩たちの想いとやさしさが込められていた。
その時はその人も喜んでいるように見えた。
だけど、後日こんなことを聞いてしまった。
『あんな中途半端なものを贈られるんだったら、貰わなかった方がマシ』
……その感想は人としてどうなんだとその時は強く思った。
それは今でも変わらないけど、その人にとっては後輩たちのやさしさなんてその程度のものだったのだろうと思えるようになった。
私が部活の面々と全く連絡をとっていないのと同じでその程度のものだったのだろう……
優しい風が吹く。
私をそっと包みこんでくれる。
天涯孤独となってしまった私だけど、父が残してくれた物語のおかげで寂しくはない。
だからまた、あの草原に行こう。
あの時と同じ、変わらない草原。
そこで風を感じて私も物語を書こう。
父が書いていた勇者と姫の物語。
その結末を。
§
文字遊戯をクリアした記念に書いてみました。
美しく、楽しく、だけど少しだけ物悲しい余韻の残るゲームでした。
良かったらプレイしてみてください。