マグカップを二つ用意して、一つは熱いコーヒーを、もう一つはぬるめのホットミルクを。
弟たちのために毎朝私が用意している。
上の弟は猫舌で苦いのが嫌い。
下の弟は熱いのが好きで甘いものは少し苦手。
食べ物飲み物の好みは正反対だけど、兄弟仲はとても良い。
マグカップをそれぞれ二人の席に置いたら最後にガラスコップを出して氷を二個入れる。
そしてキンキンに冷やしたアイスティーを注いで、トーストとサラダをテーブルに置いたらいつもの朝ごはんが完成。
さあ、二人を起こしてこなくちゃね。
全く、二人揃ってねぼすけさんなんだから。
もしも君がただの人だったら、ボクと君は出会うことはなかった。
君の人生は波乱万丈なんて言葉では言い表せないくらい不幸と幸福の起伏が激しすぎた。
幼い頃に竜の生贄として捧げられたのにも関わらずどうしてだか竜の嫁になってしまうし、竜に力を与えられて不老不死になってしまったし、そのせいで欲深い人間に攫われ実験体にされた。
その実験の過程で君のクローン体……ボクが生まれてしまった。
その後竜が総攻撃をしかけて君を救出したけど……君は何もかも全て忘れていたね。
そしてどういうわけかボクを姉だと誤解した……
今、屈託のない笑顔でボクに話しかける君を見ていると嬉しいと同時に少しだけ胸が痛くなる。
ボクは君の黒歴史みたいな存在なのに、そんな顔を見せないでと……
あの場にいた大賢者が竜たちを説得し、ボクたちを誰も知らない異世界へと転移させた。
近くにあった村の人たちは言葉も通じない見知らぬ者であるボクたちを温かく受け入れてくれて、本当に感謝しかない。
ボクたちは今平和に暮らしている。
だけど、もし……もしも君の記憶が戻ったら……という最悪のことをふとした時に思ってしまう。
君にとって二度と思い出したくない出来事であるのは間違いない。
……だからその時は、その時になったら、ボクは君の前から姿を消すよ。
ボクは君の負の存在だ。本来ならいない方が正しい。
ボクがいることで君を苦しめてしまうのは嫌だ。
……だけど今は、今だけは、君の近くにいたい……
姉として共に暮らし笑うことを……許してほしい……
ご機嫌な君は鼻歌を歌いながら一人で積み木を重ねている。
もうすぐ三才になる君。まだ曲のレパートリーは少ないけれど、その分独創性のある曲も歌ってるね。
君にしか歌えない君だけのメロディ。僕は君のような歌は歌えないけど、その分君に限りない愛の歌を贈るよ。
だからもう少しだけ僕にその歌を聴かせておくれ。
パパ大好きの歌を。
大好きなあなたに贈る言葉。
月並みだけど受け取ってほしい。
I love you!
……ということを彼に言いたいけど、恥ずかしくて言えない……
彼は恥ずかしげもなく私に愛の言葉を言ってくれるけど、なんであんなにさらりと言えちゃうんだろう?
私には真似できそうにもないなぁ……
雨は嫌いだけど雨音は好き。
だから自然音(雨)を良いオーディオで再生して作業タイム突入。
しばらく作業に没頭して、なんだか音量大きくなった? と思ってボリュームを確認するも問題なし。
首を傾げつつふと外を見たら、なんと雨が降っているではないか!
急いで洗濯物を室内に取り込み、ビチャビチャになってしまったものは洗濯機に放り込んでもう一回洗濯。
水も電気代ももったいないけど仕方がない。
ん、待てよ? ……外は雨で室内には雨の自然音が流れている。
私は今、雨音に包まれているといっても過言ではないのかも。
……まあさすがに雨が降ってる中で自然音をかけてる意味はないから普通に切るけどね。