バスクララ

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もしも君がただの人だったら、ボクと君は出会うことはなかった。
君の人生は波乱万丈なんて言葉では言い表せないくらい不幸と幸福の起伏が激しすぎた。
幼い頃に竜の生贄として捧げられたのにも関わらずどうしてだか竜の嫁になってしまうし、竜に力を与えられて不老不死になってしまったし、そのせいで欲深い人間に攫われ実験体にされた。
その実験の過程で君のクローン体……ボクが生まれてしまった。
その後竜が総攻撃をしかけて君を救出したけど……君は何もかも全て忘れていたね。
そしてどういうわけかボクを姉だと誤解した……
今、屈託のない笑顔でボクに話しかける君を見ていると嬉しいと同時に少しだけ胸が痛くなる。
ボクは君の黒歴史みたいな存在なのに、そんな顔を見せないでと……
あの場にいた大賢者が竜たちを説得し、ボクたちを誰も知らない異世界へと転移させた。
近くにあった村の人たちは言葉も通じない見知らぬ者であるボクたちを温かく受け入れてくれて、本当に感謝しかない。
ボクたちは今平和に暮らしている。
だけど、もし……もしも君の記憶が戻ったら……という最悪のことをふとした時に思ってしまう。
君にとって二度と思い出したくない出来事であるのは間違いない。
……だからその時は、その時になったら、ボクは君の前から姿を消すよ。
ボクは君の負の存在だ。本来ならいない方が正しい。
ボクがいることで君を苦しめてしまうのは嫌だ。
……だけど今は、今だけは、君の近くにいたい……
姉として共に暮らし笑うことを……許してほしい……

6/14/2025, 11:58:43 AM