「何かあったら絶対におれさまが駆け付ける!
何もなくてもお前が死ぬ前には駆け付ける!
男と男の約束だ!」
声高に宣言する幼子に我は心の中でため息を吐く。
我はドラゴンで幼子は人間だ。種族も寿命も違い過ぎる。
我に何かあったとしてもこやつが生きているかどうか……
だが幼子の思いを無下にはしたくない。
「……ならばその時は存分にぬしを頼るとしようぞ」
「おう! おれさまにどーんと任せとけ!
いいか、忘れんなよ! 約束だぞ!」
ドンと自分の胸を叩く幼子に頼もしさを覚えると同時に、この約束は果たされることはないのだろうなと諦めが胸中に漂う。
……そして案の定と言うべきか、我に何もなく時が過ぎ、千年ほど経った。
我も年老いてしまい、天寿を全うする日が近づいてきた。
だがあやつは来ない。千年も生きる人間など聞いたことがない。
「あの大嘘つきめ……」
「だ〜れが大嘘つきだって?」
その声の方を見ると、約束したあの日と変わらぬ姿の幼子がいた。
まさかそんなはずは! と驚いていると幼子は得意げに笑って腰に手を当てた。
「そんな驚いた顔すんなよ。おれさまを誰だと思ってるんだ。
約束しただろ? 死ぬ前には駆け付けるって。
つーかドラゴンの人生……竜生? って案外平凡なんだな。危機も何も起こらないなんてな!」
「……ドラゴンを何だと思っておるのだ」
「んー……孤高の生き物?」
「ふっ、わかっておるではないか」
我らは笑った。久方ぶりにふたりで笑った。
積もる話はたくさんある。我の命が尽きるまで語り合ってもおそらく誰も咎めはしないだろう。
……しかし、なぜこやつが今も生きておるのか?
気にはなるが……それは聞くだけ野暮と言うものだろうな。
雨の中の相合傘は互いの声がとても綺麗に聞こえている……らしい。
嘘か本当かわからないけど、僕は本当だと信じてる。
いつもかわいい彼女の声がいつもよりもクリアに聞こえて、より魅力的な声になっているんだから!
ということは僕の声もいつもより良く聞こえているのかな……?
そう思って彼女の耳元である言葉を囁いてみたら、彼女はみるみるうちに顔を赤くして「もうっ!」と怒ったけど満更でもない顔をした。
……僕が何を囁いたのかは、まあ、傘の中の秘密ってことで。
昼寝から目が覚め、ゴロゴロと無意味な寝返りをうった後起き上がって体を伸ばす。
リビングの冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出しグビグビ飲んでいると、外が静かなことに気づいた。
寝る前は結構な土砂降りだったはずだけど、寝てる間にピークは過ぎ去ったらしい。
まだポツポツと雨は降っていたけど数分のうちに止んで雨上がりの青空が雲の間から顔を覗かせていた。
明日は晴れるかな。晴れるといいな。
明日もお仕事が待ってるんだから天気ぐらい良くなきゃね。
一生懸命走ったけどゴールの前で転んじゃった子。
親が恋しくて大泣きしながら先生に手を引かれてゴールした子。
自分で考えたカッコいい(傍から見たらものすごく独特過ぎる)走り方でゴールした子。
ゴールそっちのけで家族の元へ猛ダッシュする子。
今日は保育園の運動会。
勝ち負けなんて関係ない。みんなみんな一等賞!
ピリオドを打たなければ物語は終わりを迎えない。
その作者が亡くなってしまったとしても、物語は勝手に終わらない。
その意思を継いだ誰かの手によって物語は続いていく。
……それはそれとして、ドラ◯もんやサ◯エさんはいつまで続くのだろうか……?
いつか『祝! 放送100年目突入!!』とかなるのだろうか。
そうなると今はまだ道半ば。まだまだ続く物語なんだろうなあ……