わたしは何者にもなりたくない。
何にも染まりたくない
だから透明なままでいいの。
わたしはわたしのままこれからを生きていく。
誰にも優しくされなくていい。誰にも干渉されたくない。
一人ぼっちでいいの。寂しくなんかない。
透明なわたしは誰にも見つけられなくていい。
だから手を差し伸べないで。
わたしに笑いかけないで。
優しくなんかしないで。
泣きたくなんかないのに涙が出てきてしまうから。
人生とは課題の連続なのかもしれない。
一つの課題が終わり、また始まる課題。
家事やタスクとも言えるこの課題は生きている限りなくなることはないのだろう。
……そう考えると人生って中々結構忙しいのかもな。
よし、のんびりいこう。のんびり。
課題に追われているとかそんなのは忘却の闇の彼方に忘れてしまえ。
それで困るのは紛れもない俺自身だけども。
草原に姉と寝っ転がって夜空を眺めてみる。
こうして一緒に眺めるのはいつぶりだろうか。
いやそもそも野宿するのも久しぶりな気がする。
最近はゴタゴタに巻き込まれてやっとあの街から旅立てたんだもの。
こうして二人で穏やかな時間を過ごしているとなんだか少しホッとする。故郷を出た直後はずっとこの時間が続くのかとげんなりしたこともあったのに。
「ねえ、あの星は何?」
指差した先には周りの星よりひときわ明るく輝く星。
北極星かなと思ったけどそれよりも明るい気がするし何よりも場所が違う。
そういえば星が寿命を迎える時、星は明るく輝きそして爆発すると本に書いてあったはず。
おそらくそれだろうと姉に話すと姉はふぅんと素っ気ない返事をしてそのまま黙ってしまった。
姉の想定していた答えじゃなかったのかなあと思っていると姉はむくりと上体を起こし、小さな声で呟いた。
「生まれる時は一緒だったんだから、死ぬ時も来世も一緒がいいわ」
あの街のことを引きずっているのだろうか。いつもの姉にしては弱々しく感じた。
僕は体を起こして姉の手を握って安心させるように笑う。
「僕たちは最強で最高の双子だから大丈夫。
なんならここで誓ってみる?」
姉はぽかんと口を開けた後、にっこりと笑う。
いつもの姉の笑顔だ。
「ええ、誓いましょ! わたしたち最強で最高なんだからどんなことだってできるもの。
だからずっとずっと一緒よ! 今世も来世もそのまた先も!」
「僕たちは双子!」
この先どんなことがあっても姉と一緒なら大丈夫。
輝く星の下で誓ったからか、未来は星のように明るい気がした。
『もし願いが一つ叶うならば、貴方は何を願う?』
生涯でおそらく一回以上は訊かれるこの問い。
たとえすごく考えて本心で言ったとしても受け取る人にとってはきっとどうでもいいこと。
お金持ちになりたいとか、世界平和とか、嫌いな人の破滅とか、大好きな人の幸福とか……
そんなこと言われてもふーんそれが一番叶えたい願いなんだなあとしか思わない。
少なくとも私はそう。
そんな私の今現在の願いは『良い文章がすぐ思いつけますように』
貴方は何を願った?
どうしようと思考を巡らせる。
たまには一人で温泉旅行と羽根を伸ばしに来ただけだったのに。
なぜこんなところにあの眠りの探偵と小学生探偵がいるのだろう……
しかも仲良く牛乳飲んでて明らかに誰かを待ってる感じがする。
ということは娘さん待ちかぁ……
温泉入りに来たけど事件に巻き込まれないようにやっぱり部屋に戻ろうと結論を出して踵を返した瞬間、お風呂の方から甲高い悲鳴が。
……嗚呼、やっぱこうなる運命なのか。
あの死神め。