誰にも知られたくない秘密の場所。
妹の場合はロフトがその場所にあたるらしい。
妹が幼稚園児の時、いそいそと何かを持ってハシゴを登ったりしていたからたまに『手に何か持ったままハシゴ使わない!』とお母さんに怒られていることもあったっけ。
まあその次には『口に咥えたままハシゴ登らない!』になってたけど。
そんなこんなで数年かけて妹がコツコツ作り上げた秘密の場所はご丁寧に布とかで秘密基地チックに覆っている。
中で何をしているのかはわからないけど、きっと漫画とかお菓子とか読みふけりの食べ漁りしているんだろうなと思っている。
気にはなるけど気にしすぎてはいけない。だってプライバシーだし。
あの布の内部が家族の誰にも内緒のように、身内は知っちゃダメなこともたくさんあるはず。
そう、私の秘密の場所とかね。
ラララ〜…♪
美しい歌声が聴こえてくる。
どこからかも誰が歌っているのかもわからないその歌声は、ここ数日必ず夕焼け空になったら聴こえてくるようになった。
ある人は魔女だと、またある人は悪魔だと、またまたある人はセイレーンの仕業だと言う。
しかし真相は誰にもわからない。確かめるのが怖いからだ。
もし本当に魔女だったり悪魔だったりセイレーンだったりしたらどんな目に遭うのか想像もつかない。
ボクもそう思っていた。……昨日までは。
町から少し離れた森の中。そのほぼ中心に位置する大樹。
そこに身を預けるように紺色のローブを身にまとった男の人があの美しい旋律を紡いでいた。
だけどその表情はどこか悲しげで全く楽しそうではなかった。
最初はどうしてそんな顔をしているのだろうとおっかなびっくり見ていたけど、歌声を聴いてる内にもっと近くで聴きたいと強く思うようになった。
そしてふらりと一歩踏み出したその瞬間、その人がボクを見て目を見開いた。
ボクがぼんやりとキレイな青い目だなあと思っているとその人は脱兎のごとく逃げ出し、あっという間に見えなくなった。
ボクはぼーっとそれを眺めていたけど急にハッとなって慌てて町に帰った。
町では歌声が急に途切れたことを不思議がってる人もたくさんいたけど、ボクはその理由を言えなかった。
言ったら怒られそうな気がしたから。
そして今日、あの歌声は聴こえてこなかった。
町に平穏が訪れたと安堵している人も大勢いる。
だけどボクの胸はモヤモヤしている。
昨日ボクが森に行かなければ、大樹のところまで行かなければ、あの歌声は今日も聴こえていたのではないかと。
あの歌声に魅入られていると言われても否定できないけど、それでもボクはもう一度聴きたいのだ。あの歌声を。
そのためならばどんなことでもやってやる。
風はいろんなものを運んでくる。
暖かさや寒さ、花粉やにおい、便りや知らせ……などなど。
そう考えると風が運ぶものは多岐にわたる。
季節もまた風が運んでくるのだろう。
ならば早めに春を運んで来ておくれ。
それとスギ・ヒノキ花粉は運ばないでおくれ。
頼むから。
英語のquestionを見るとリスニングを思い出す。
(何言ってるのかわからねー……)からの『Question』で(何聞かれてるのかわからねー……)の絶望。
選択肢は全て勘。当たればラッキーである。
言語自体に興味がないわけではないのだが、なぜか頭に入ってこないのだ。
ゲームや漫画に出てくるような英単語はしっかり覚えるのに。
不思議だなー。
『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます。指切った!』
これを聞く度に思う。
物騒なフレーズだよなあと。
げんまんは漢字表記で拳万……拳で一万回殴られるということだそうだ。
約束するために指を切って、嘘をついたら拳で一万回殴り、あげくの果てに針を千本飲ます……
そうして交わした約束はいったいどれほどのものだったのだろうか。
指を切るだけの価値はあったのだろうか。
まあ指切りの起源が江戸時代の遊女からだそうなのでそれくらいの価値の重い思いがその人にはあったのだろうな。