今日こそ告白しよう。
……そう思って五日が過ぎた。
今日こそは、今日こそはとずっと思っているのに悪いことばっかり考えてしまって中々行動できない。
『じゃあこの思いをずっと抱えて生きていくの?
ちゃんと言えば良かったって後悔したままにするの?』
そう心の中の私が問う。
私だってこのままで良いなんて思ってない。
今の私に足りないのはほんの小さな勇気だけ。
今こそそれをなんとか引き出す時。
……よし。当たって砕けろだ。
ここまで引き伸ばしてしまったからきっとすごく怒ってると思う。
でも、こんなことになったのは私が臆病だったせいだ。
……覚悟を決めよう。
「お父さん。……コップ割ってごめんなさい……」
……案の定、早く言いなさいって怒られた。
でもちゃんと告白してえらいねとも褒められた。
それでも……やっぱり早めに言うべきだよね。
怒られるってわかっていても。
お姉ちゃんを驚かせたい。
こう……わぁ! って感じで。
イタズラはこの間のでもうこりごりだから、それ以外にしないといけないわね。
だったら……何がいいかしら?
そういえばお姉ちゃん、おっきなぬいぐるみが欲しいって言ってたような。
それをプレゼント……うーん、あたしのお小遣いが足りないわ。
というか、お姉ちゃんの欲しいものってだいたい小学生のあたしには高すぎるものばかりなのよね。
お姉ちゃんもお菓子とかジュースとかかわいいヘアゴムとか欲しがればいいのに。
うーん、どうしよう……
……困ったときの、お母さーん!
そうしてお母さんに相談したら今日の夜ご飯はグラタンになって、お姉ちゃんもわぁ! ってびっくり驚いてた。
……なるほど。滅多に出ない料理で驚かせるっていうのもアリなのね。
あたしもお母さんにお料理教えてもらおうかしら。
……だってなんか悔しいもの。
いつか聞いたおとぎ話のような物語。
いつの間にか僕たちもそれと同じような物語を紡いでいる。
僕たちはただ好きなように旅をして、時々事件に巻き込まれては人助けをしていただけだった。それなのに双子の英雄とか大層な二つ名がついてしまった。
それのせいでさらに事件に巻き込まれたり、ややこしいことになったりしたけど、僕も姉もノリノリという名のヤケクソで問題解決に取り組んでいた。
そんなこんなのすったもんだがてんこ盛りだから僕たちの旅路を纏めた本が人気になったりするんだろうな。
……まあでも、内容はちょっと盛りすぎなところもあるけどね。
僕たちの旅が終わっても、本の中の僕たちは終わらない物語を紡ぎ続けるのだろう。
それはきっと脈々と受け継がれて英雄譚として、おとぎ話として人々に愛され続けるのだろう。
そう考えるとなんかすごくロマンだね。
もう助からないとわかってしまった彼に伝えるのは、残酷な現実ではない。
彼にとって救いになるような、やさしい嘘。
彼はかつて取り返しのつかない大罪を犯し、多くの人を悲しませた。
でも彼は犯した罪の重さをわかっている。そして血で汚れている自分は地獄に行くだろうと彼は語っていた。
彼は正義感に溢れる真っ直ぐで優しい人だったのに、なぜこんなことになってしまったのだろう。
運命、そして過ぎたる力は恐ろしいものだ。
彼は閃光みたいに私の心に焼き付いて、きっと永遠に離れることはないのだろう。
そしてふとした時に彼のことを思い出して泣きたくなることもあるのだろう。
まるで親しい人を亡くした時のように。
……しかしまさか、オンラインゲームのキャラクターにここまで感情移入するとは正直予想外だったな。
侮りがたし、ドラ◯エⅩ。
かつて流行ったあの曲を瞳を閉じて聴いてみる。
あの頃の思い出が脳裏に浮かんで、ついでに忘れたい痛い思い出や甘酸っぱすぎた思い出も出てきてしまった。
まだ笑い話にもできない思い出たち。
もう後数十年経ったら『あの頃は怖いものなんて何もなかった』と周りに言えるようになるのかな。
あの頃の自分は愚かだったと、若気の至りというのは恐ろしいと、笑いながら酒のツマミにでもするのかな。