夜見てる夢、自分が思い描いている夢。
それらが現実になればどんなに良いだろう。
そう思ったこと、一度や二度はあるはずだ。
私だってある。
だが、そんなものは所詮夢物語。
夢は夢のままであればいいのだ。
変に高望みしては叶わなかった時、夢と現実の乖離に苛まれることになる。
現実は辛く厳しい。努力すれば夢は叶うと成功した人は言うが、どうにもならないことだってたくさんある。
だから私は夢を見ないことにした。
そうすれば変に落ち込まなくてもよくなるから。
そう、私は諦めた。
夢は夢のままで終わらせるべきだと、現実で叶わなくても良いと、私は思う。
後ろ向きだと言われてもいい。夢がないと言われてもいい。
期待に押しつぶされて私が私でなくなるより、よっぽどマシだ。
友達が私の手の届かない遠いとこへ旅立った。
今頃は三途の川を元気に泳いでいることでしょう。
好奇心旺盛で面白そうなものに何でも首を突っ込んで物事をしっちゃかめっちゃかにするのはいつものことだった。
それでもなぜかその物事とかが上手くいって、周りが友達に感謝して、友達が首を傾げるのもいつものことだった。
己の本能のままに、あるがままに生き抜いた友達は私にとって眩しい太陽のような存在だった。
まあ元気さも加味すれば灼熱の、という枕詞がつきそうなものだけど。
だから私はさよならは言わないでまたねと手を振る。
だってお昼に空を見上げればいつだって会えるのだから。
眩しいのは嫌い。真っ暗闇も嫌い。
私は光と闇の狭間で一人、寝転がっていた。
時々どっちからもお誘いが来るし、貶されたりするけれど、もうここが心地よくなってしまった。
このままでいいのかなとはちょっぴり思うけど、どっちにもいけない私はここがお似合いなのだろう。
だから私はずっとここにいる。
でも耳の奥からくすくす笑い声が聞こえるの。
この人はずっと怠惰だね……って。
速さに時間を掛ければ距離が求められる。
距離に速さを割れば時間、距離に時間を割れば速さがそれぞれ求められる。
当時それが覚えられなくて算数のテストはボロボロ。
本格的に算数や数学が苦手になった原因は間違いなくこの公式だった。
だから距離といえばこの公式が真っ先に思い浮かぶ。
私と同じような人が日本のどこかにはいるだろう。
……いてほしい。マジで。
家族を失った。
故郷を失った。
大切な人を失った。
心の拠り所を失った。
わたしの心はぽっかり大穴が開いて、どんなことでもどうでもよくなった。
失ったものだけを数えちゃダメだよって、全然知らないお姉さんは言った。
じゃあわたしはどうすればいいの?
わたしは過去を思い出すことでしかわたしを保てないのに。
お姉さんはわたしの手を引いていろんなところに連れて行ってくれた。
のどかな草原、大きなお城、静かな森……
お姉さんはわたしに旅の心得とかの生きる術を教えてくれた。
いつも明るく笑っているお姉さんがいつしかわたしの大切な人で、心の拠り所になっていた。
ずっとこの幸せが続けばいいって、そう思っていた。
……でも、そうはならなかった。
お姉さんはわたしの前で死んでしまった。
泣いて泣いて、泣き通しても死んだ人は生き返らない。それはわかりきってるのに涙が止まらない。
やっぱり大切な人はわたしの前からいなくなるんだ。
泣かないでという優しい言葉をもうかけられなくてもいい。
わたしは一人で生きていく。