泡立つ小さな海の上、二匹の魚が泳いでました。
「何を大事に持ってるの?」
大きな魚が言いました。
「私の可愛い子供なの、水草まで運ぶのよ」
小さな魚は、水草に着くと
お腹の粒をくっ付けます。
水に揺られるその様は。まるで小さな海ぶどう。気づいた生き物やってきました。
「それは何なんですか、メダカさん、小さくてとっても美味しそうですね」
貝殻背負ったタニシは言います。
「これは私の大事な子、だれにだって渡しません」
「でもオイラはいつもカビばかり、下手くそなキャンバスの上を這って食べてる。
たまには良いじゃないですか」
「お前をミジンコみたいに食ってやろうか」
光のない目に驚いて、タニシは逃げていきました。
次に来たのは、小さな小さな赤虫でした。
「メダカさん、メダカさん、俺はいつもあんたたちの出した汚いもんを食べてます。
しかも俺らはあんたに喰われます。
そりゃ他所もんなんで、嫌われんのもわかります。でも、俺らも生きてる。好きもん食べたい、おそそわけダメですか。」
パクりと赤いの食べながら、
大きい魚が白い煙を吹き出します。
卵はきらきら輝いて、小さな瞳を覗かせます。
「やっと準備ができました」
「いつも飽き飽きミジンコおさらば、
動かないのはスリルもない。
動かないから、あいつらに食われます。」
「ありがとう、あなたもよかったらお一つどうぞ」
巨大な影が現れて水草を取り上げました。
二匹は素早く逃げたのでした。
【小さな命】
「愛してる」「かわいいね」「君が好き」
安っぽい言葉に流されて、彼と恋をした。
共通の趣味、まあまあの容姿、
自信のない私の依り所、
毎日、話した。毎日笑った。
次第に支配の言葉が増えた。
「ああしろ」「こうしろ」
あなたは私の父ですか?
理解したいとか、心がわかるとか、
大嘘つくのやめてください。
口だけのおまえは、
とうとう私を捨てました。
「自分を大事にしろ」
その台詞、世界で一番大嫌い。
【love you】(Love you!)
浮かぶ閃光
紅く照らすそれは、まるで太陽のよう。
照らした先は、瓦礫と死と灰の山
多くの産声が、熱い熱いと嘆いても、
溶けた皮膚、渇いた喉は戻らない。
「だれか助かったの?」
「一人もいないよ」
荒野は何処までも続く。
【太陽のよう】
幽霊街の一幕。
豪胆な幽霊
「産まれられなかった!そりゃ可哀想だ。
生きてりゃ、良い事あったのに、
まあ次の輪廻に期待だね!」
ん?あたしゃ違うよ、新しい街にいるかもしれんね」
新しい街。
ぐちゃぐちゃ幽霊
「産まれられなかった!俺も俺もさ、
万能だの何だの言われ、みんなに期待された!でも、嘘だの何だの酷い話、作った責任とって欲しいもんだ!
ん、いやいや俺は違う、すまねぇな坊、
古い村ならいるかもしんねぇ」
古い村
沢山の尻尾、綺麗な耳の幽霊
「わしはもう歳でな、何千年生きたが、悪いことして捕まって、結局ここに落ち着いた。
お主の探し人が見つかろうがなかろうが、
それは変わらん。残念だが、諦めよ」
知らない場所
五十代や四十代
「ねえ聞いた?画家の娘さんの話」
「ええ、何でも流れたそうじゃない」
「それ以上のすごい話、なんでも死んじゃったらしいの、残ってたのは何を描いたかもわからない、キャンバスだけだったそうよ」
【同情】
「ああ、今日も書けんかった」
”世界で一番”という題材は、いつの間に別のに変わってた。
「数で支配者決める神様と、その動物たちの話、結局、DNAが一番多いことにして、
オチつけるまで決まってたのに、流れちまった」
なんだかやる気もなくなった。
そもそも、ここ最近、アイデアが頭に浮かぶだけで、形にすんのが上手くいかん。
なんか良いのできても、それが正しいんか、いちいち調べてる。
誰もそんなの気にせんのに、リアリティの奴隷とはまさしくこの事。
「今日はもうええわ、明日、題材書けばええ」
読書を済ませ、出来もしない予定を胸に、寝入るのだった。
【今日にさよなら】