シラヒ

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11/4/2024, 9:31:00 AM

毛穴ひとつない美しい肌。
目は強気なカラーで丁寧に彩って。
アイラインは目尻を少し跳ね上げる。
淡い桃色のチーク。
ハイライトは適度に自然に。
完璧な保湿のおかげでふわふわの唇にとっておきの赤を乗せる。
何度か唇を擦り合わせて最終調整を。
そうして鏡を覗き込み、惚れ惚れする。

「あぁ…すごくキレイだよ、姉さん」

鏡の中の姉さんが、蕾を咲かせた花のように柔らかく微笑む。
ありがとう。本当に自慢の弟ね。
口が動いて、これ以上ない褒め言葉をくれた。

「そろそろ時間だから、行かなくちゃ」

気をつけて。急いでいると危ないから。

「大丈夫だよ姉さん。僕はちゃんとやれるから」



そう、それは楽しみね。

僕の姉さんは、わらっている時が一番美しい。

4/4/2024, 4:00:10 AM

1つだけ、なんでも手に入れられるなら何が欲しい?

「世界。」

予想外の規模の大きさ。冗談を言っているのか、本気なのかは目を見れば分かるけれど、それにしたって世界なんて。

「1つだけ、とかセコくないか。おれには欲しいものがたくさんある。1つだけじゃ満足できない。」

おまえだけで満足、とは言ってくれないの。

「それはおまえの気持ち?それとも存在?」

……どっちも。

「ふざけんなよ。おまえと過ごすためには生きなきゃならない。一緒に過ごす時間も、金もいる。全然足りない。」

だから世界なの?

「世界だ。おまえだけで満足しろって言われて、はいって言えるような出来た人間じゃないんでね。おれはおまえも、その他も全部欲しい。」

まさに俺様。ジコチュー。子供みたい。

「なんとでも言えよ。おれは諦めねぇから。」

知ってる。

「なら、いい」

にぎられた手のひらが、じんわり熱くなった気がした。

10/26/2023, 12:01:14 PM

「おれはお前を愛してるから、何も言われなくたって分かる」

「お前がおれを『愛してる』って」

「だから、おれは愛して欲しいなんて思わない」

「言葉だっていらない」

「でもな」

「最期になるのなら」

「一度でいいから、言葉で聞きたいと思うんだ」

8/20/2023, 2:18:42 PM

君にさよならを言う前に私がすべきこと。


「いきなり呼び出してなんだよ」
相変わらず微妙にダサすぎる服、人を舐め腐った態度。
「ま、どうせあれだろ?『まだ私のことが好ーー

右ストレート。

拳が綺麗に決まると、人はあんなに吹っ飛ぶものなのか。
私はにっこり笑って「浮気したくせに頭が高い」と吐き捨てた。


「電話も出ないくせに勝手に押しかけてくるなんて、ほんとに気遣いができないのねアンタは」
ドアを開ける瞬間は若々しいマダムの笑顔だったのに、私だと分かるとこの表情。
「いい歳した大人なんだからもういい加減ーー

ラリアット(威力4分の1バージョン)。

床に倒れる老人ぐらいではもう痛まないぐらい、心は傷つけられたんだよ。
私はにっこり笑って「反抗期遅くなってごめん」と吐き捨てた。


最後にやってきたのは君の元。
ベッドに横たわる君を見て、私は溜息を吐いた。
「君の望みはなんでも叶えると言ったけど、後で大変な思いをするのは私じゃない」
「でも引き受けてくれたじゃないか」
君はにっこり笑ってこう言った。
「冥土の土産はこれぐらいインパクトがなくっちゃね」

「ありがとう」
「さよなら」
私もにっこり笑ってこう言った。

4/12/2023, 10:57:52 AM


わたしの手から離れていく
鋭い先で大気を切り裂き
紙でできた白い鳥は
とおく とおく とおくへと
遠い空へと飛んでいく

白い鳥は雨に溶け
柔らかな空の綿となる
青に浮かぶ眩い白は
ふわふわ ふわふわ ふわふわと
呑気な様子で風に乗る

空はゆっくり流れてく
わたしが行けぬところまで
山こえ 海こえ 街をこえ
巡り巡って戻るのだ

丘の上 空の下
風に靡く長い髪
高く 強く どこまでも響くように叫んだ

私はここにいる

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