波にさらわれた手紙
『瓶に手紙を入れて海に流すと願いが叶うんだって』
幼い頃に君が話したおまじない
今も忘れることのできない思い出が
滝のように流れてくる
それはすべてが美しくて
触れれば消えてしまうような儚さを孕んでいる
永い眠りについた彼は
一体どんな夢を見ているのだろう
目の前にずっと続く地平線に私は息を呑む
まっすぐに進むそれに私は彼のことを重ねてしまうから
私は紙に一言だけ書いた
叶わなくていいからと
届いて欲しくて書いた
貴方に会いたい
8月、君に会いたい
『元気にしてるかな…』
一人部屋で小さく呟いた
あの日のことがまだ鮮明に蘇る
7月の中旬私はある男の子と出会った
彼はいつしか私の一部になっていた
向日葵畑で笑う君は太陽のように煌めき
たくさんのそばかすは星のように輝いて
私の心を奪って行った彼は
8月になると呆然と姿を消した
まるで神隠しにあったかのように
でも私はまだ君に会いたい
眩しくて
『大好きだよ』
そう笑う君の隣は私だった
彼の優しさが怖かった
いつからだろうこの気持ち
知らない間に溜まっていた気持ちは
どんどん大きくなって
彼の隣にいるだけで苦しくなっていく
彼の隣は本当に私でいいのか
これからも愛を届けるのは私なのかと
背中に重くのしかかる
君が隣で笑う笑顔は
眩しくて苦しかったから
熱い鼓動
『優勝だーーー!』
そうリポーターが叫んだ
あの日夢見た情景のようだった
歓声が眩しいほどに僕達を照らす
抑えられなくなるほど、胸が高鳴っていた
あの日の練習は嘘じゃなかったんだって
ここにいるのは夢なんかじゃないって
チームメイトの顔を見て実感した
たくさんの表情をしていた
笑顔と涙が交差していて
そしてトロフィーを手にした時には
みんなが熱い鼓動で高鳴っていた
タイミング
今日もクラスメイトの彼を目で追いかける
私は彼のことが好きだから
隣で座る彼は好青年で人気者
でも最近様子がいつもと違う
一人の女の子を眺めているみたい
まるで恋焦がれているみたいに
私は彼の姿をみて
苦しくなった
私の姿は眼中に入ってないみたいで
そして数日後
その子と彼は付き合ったって
私のほうが先に恋に落ちたのに
それなのに彼女の「好き」が届いてしまっただけなのに
人生はすべてタイミングなんだと神を憎みたくなった