兎と亀

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11/5/2025, 12:26:58 PM

時を止めて


ただ肩が触れた

茜色に染まった電車の窓に映る君は
天使のようだ

柔らかい頬が肩でふにゃりと変形する

触れようとしても
消えてしまいそうな顔に

なんだか怖くなった

睫毛の一本一本が光に映り白や金と変わる

ここにいるのは人間なのか?天使なのか?

なんでもいい
ただ…この時間が続いて欲しいから

お願い神様…
時間を止めて

11/4/2025, 11:14:34 AM

キンモクセイ


微かに残った香りを抱きしめた
まるでキンモクセイの花束を抱えているような感覚だ

今日もいつものように残り香を探す
懐かしいあの香りを求めて

君は僕の初恋だった…
彼女の存在を感じれば酔ったような感覚に陥って
何度も求める

真実の愛が欲しかった僕を君は隠す
魅惑の香りで消して行く

まるであの世へ誘うように

11/3/2025, 10:33:49 AM

行かないでと、願ったのに


神無月…
神が消える月…

きっと君は神だったんだよね?

月見れば千々に物こそ悲しけれ
我が身ひとつの秋にはあらねど


この秋は私一人の物じゃないのに…

貴方がいないだけで
月を見れば悲しさが増すだけ…

ねぇ貴方が戻る日を待っているの…

月を見て…ただ願ったのに

お願い…行かないで…

11/3/2025, 10:26:06 AM

秘密の標本


「ねぇ知ってる?
理科室に一つ綺麗に飾ってある標本って
先生の宝物なんだって」

女子生徒たちが僕の宝物を見て呟く

もちろん…大切な宝物だよ

綺麗な昆虫達も動物達も
全部僕のコレクション

「先生ってどうして結婚しないんだろう…
年も年なのに…」

もう一人の生徒が呟いた言葉を聞いた僕の答えは一つ…

彼等こそが僕の花嫁であり子供でもある
それくらい愛してやまない物ってこと

もちろん君たちも



11/1/2025, 7:38:45 PM

凍える朝


冷気で目が覚めた
手足が冷えて氷のように冷たい

冷凍庫に閉じ込められたような空気に
私は布団に閉じ籠りたくなる

静かにこちらに向かう音がする
氷の橋を渡るような音がして
息を潜めた

あの時から一体何年経っただろう

「冷凍保存実験成功」

ディスプレイに映された言葉を見ても
ピンとこなかったが
次第にあの時が蘇る

誰かに奪われた家族
金に溺れた親友

一筋溢れた涙もすぐに凍ってしまう

きっと

貴方の運命でさえも
凍っていつかは砕けるのだから

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